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職場と喫煙問題

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平成27年の労働安全衛生法の改正に伴い、職場における喫煙への考え方は非常に厳しくなりました。しかし古くから働いている喫煙者の中には、その変化に適応できない人も多く、職場のトラブルの原因となっています。

職場での喫煙への考え方の時代的変遷

これまで産業医として職場の健康管理を担ってきましたが、最近大きく扱い方が変わったものとして、喫煙がらみの問題があります。

平成8年に厚生労働省は、職場の喫煙対策に対するガイドラインを作りました。そこでは基本的にタバコは、喫煙者並びに受動喫煙者に有害であることを前提としながらも、「喫煙者と非喫煙者の相互理解が重要だ」という立場をとっています。

例えば、留意事項として次のように書かれています。
「喫煙対策を円滑に推進するためには、喫煙者と非喫煙者の双方が相互の立場を十分に理解することが必要であること。喫煙者は、非喫煙者の受動喫煙の防止に十分な配慮をする一方、非喫煙者は、喫煙者が喫煙室等で喫煙することに対して理解することが望まれること」。

また、施設に関しては「喫煙室等は、喫煙者の利用しやすさを考慮して、就業する場所の近くに設けることが望ましいこと」とあります。

これが平成27年の労働安全衛生法の改正を経て、重点は完全に非喫煙者の受動喫煙防止に置かれることになりました。

同法第68条の2には、次のように書かれています。
「事業者は、労働者の受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。第71条第1項において同じ。)を防止するため、当該事業者及び事業場の実情に応じ適切な措置を講ずるよう努めるものとする」。

以前と違って今は、会社は従業員の受動喫煙を防ぐため、実施することが可能な措置のうち最も効果的なものを、講じる努力をしなければならなくなったのです。

現代は非喫煙者の受動喫煙防止がメインテーマ

この時代の変化を、特におもしろくないと感じているのは、喫煙者のオーナー社長です。社長にしてみれば、若いうちから苦労してようやく会社を大きくすることができ、立派な社長室も持つことが出来たわけですから、そこで好きなタバコをゆっくり燻らしたいという気持ちはよく分かります。しかしながら、社長室から流れてくる煙が従業員の苦情を引き起こすことがあります。

かつては社長だけは“治外法権”という感じの会社も多かったのですが、今はそうはいきません。従業員が産業医に「社長室からのたばこの煙で職場環境が悪化している」と訴えてくる事態となれば、産業医としては社長に対して意見せざるを得なくなります。

医師の立場から言うと、喫煙は百害あって一利なしです。タバコは肺がんや心筋梗塞等致命的な病気の原因になりますし、それは受動喫煙であっても同じです。できれば社長に限らず、全従業員に禁煙して貰いたいと思っているぐらいです。

ですから、まず産業医は、社長に対して「社長に今病気になられると従業員が路頭に迷いますよ」と説得します。さらには「これだけ受動喫煙対策が言われているこのご時世、会社の評判が落ちますよ」などと説得することになります。

それでも社長が喫煙にこだわるときは、社長室の喫煙室化をはかることになります。換気設備の強化やエアーカーテンの導入など、専門業者に入ってもらい、社長室から一切煙や匂いが漏れないように対策を取ることもあります。(チェーンの喫茶店などで喫煙室から全く匂いが漏れてこないところがありますが、あの状況を作り上るのです。)

実際これで何とか社長の喫煙問題を解決した会社があります。費用は掛かりますが、これも会社における喫煙リスクのひとつと言えます。同時に、それほど現代は、非喫煙者の受動喫煙防止が重視されているとしっかり認識しておく必要があるでしょう。


合同会社DB-SeeD 
日本医師会認定産業医 労働衛生コンサルタント
神田橋宏治

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