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表に現れない労務リスクの怖さ(上)

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企業価値の毀損

もっとも、ここまで述べたことは、これまで様々なところで言われ続けていることだから、大方の経営者からすれば、そう驚くことではないのかもしれない。なかには、自社の人事・労務管理に不安はあるが、決算書上の数字は良いから問題ないと考えている経営者もいる。しかし本当にそうであろうか。実はまさにこの思考こそが、人事・労務分野に決算書がなく視覚化できないことの怖さの一つである。

決算書が黒字であったとしても、本来支払わなければならない残業代を支払っていなかったとしたら? 退職金規程がありながら、退職金原資を適正に準備していなかったとしたら、どうだろう? これらは決算書上に表れていないだけで、会社からすれば隠れた債務に他ならない。これらを厳密に加味すれば、赤字に陥ることだって考えられるのである。

さらに問題となるのは、企業間合併や事業譲渡のケースだ。大企業だけのものだと思われてきた合併や事業譲渡は、今や中小企業にも広がりを見せつつある。仮にこうしたケースになったときは、企業価値を算出する。すなわち、将来的に発生が予想されるキャッシュから、それが現在どのくらいの企業価値になるかが計られる訳である。その際に、“デューデリジェンス(Due Diligence)“が行われる。これは買収や統合される企業側の監査のことである。

これには、財務状況をみる会計デューデリジェンスと、法令違反がないかどうかをみる法務デューデリジェンスが一般的だが、昨今、ここに労務分野の尺度が入ることが珍しくなくなっている。それが、労務デューデリジェンスと言われるものだ。

未払い残業代がある、時間外残業単価が適正に算出されていない等々があぶり出された場合、早急な是正対応(かといって、体制を急転換させ是正することはほぼ不可能に近い)をしなければ、合併自体の破談や、明らかにされたリスク部分に相当する額が企業価値から差し引かれることになる。

このように、自社の事業に優位性や、優良資産を保有していたとしても、適正な人事労務管理がなされていなければ、自社の企業価値を大きく毀損する可能性がある。よって、あらゆる企業において、けっして労務リスクは軽視されるべきではない。

SRC・総合労務センター、株式会社エンブレス
特定社会保険労務士 佐藤正欣(まさよし)

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