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アメリカ企業で活躍する文化人類学者たち ~顧客のニーズを掘り起こす「センス・メイキング」で商品を開発~

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センス・メイキングは顧客の無意識の動機を解明する手法

センス・メイキングは顧客の無意識の動機を解明する手法

 欧米の企業ではいま、文化人類学者の活躍がめざましい。インテルをはじめ、ホテルチェーンのマリオット・インターナショナル、レンタカー大手のエイビス、ブロック玩具のレゴグループ、ストーマ(人工肛門)などを扱うヘルスケアのコロプラスト、大手広告代理店のBBDOまで、多くの企業が文化人類学者を登用し、「センス・メイキング」と呼ばれる手法によって商品を開発したり、問題を解決に導いたりしているのだ。

 センス・メイキング(Sensemaking)とは文字通り「意味付け」のことで、人が経験から商品や物事に意味を与える過程を指している。そこから転じて、ビジネスの分野では、人びとの日々の生活や行動を観察し、従来の市場データ分析や統合分析、アンケート調査、フォーカス・グループ調査などではとらえ切れなかった、顧客本人でさえ意識していない動機を明らかにする手法と定義されている。

 実はセンス・メイキングは1990年代から企業で注目されていた。インテルでは1998年にスタンフォード大学で教鞭をとっていたジュネビー・ベル(Genevieve Bell)博士を高度研究開発ラボ(the advanced research and development labs)のディレクターとして採用した。オーストラリア人のベル博士はエンジニアの父親と文化人類学者の母親を持ち、幼少時代はオーストラリアの原住民をフィールドリサーチする母親とともに、文化も言語も異なる未開地で多くの時間過ごした人物だ。

インテルはベル博士の採用で未来志向の商品を開発

 彼女は社会科学者、インタラクション・デザイナー、人間工学のエンジニア、コンピュータ科学者などから構成される研究チームを率いて、「人々が何に興味を持ち、何を愛し、どんなことがストレスになるのか」を知るために、エスノグラフィー(行動観察)を実施。センス・メイキングの手法を使って、未来のテクノロジーやテクノロジー・システムはどうあるべきか、どのような商品を開発すべきなのかの手掛かりを掴み、これまでに13の特許を取得している。

 さらに彼らの調査の結果から、2006年にはインドで「コミュニティPC」とプラットフォームが誕生した。「コミュニティPC」は耐久性の高いPCで、電力供給が不安定でITに馴染みのある人々が少ないインドの田舎でも使えるように設計されている。「コミュニティPC」はインドの山村で地域の起業家が運営する「キオスク」に設置されており、電子政府の書式で手続きしたり、教育、医療アドバイスなどをオンラインで受けられるようになっている。

 ベル博士とそのチームの存在はインテルを半導体で何ができるか考える企業ではなく、未来のテクノロジーのあり方を考え、あるべき方向へ導く企業へと変貌させた。この功績によって、彼女はインテルのヴァイス・プレジデント兼研究者として最も地位の高いフェローに任命されている。また、2010年にはアメリカの雑誌&ウェブメディアFastCompanyの「ビジネスで最もクリエイティブな100人」に選ばれている。

 「センス・メイキング」は問題解決にも有効だ。DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー 2014年8月号には、掲載された論文「デジタル・データで説明できない顧客の行動原理 エスノグラフィーが顧客の真の姿を描き出す」(ReDアソシエーツ 顧客担当取締役 クリスチャン・マズビャーグ/同社 欧州部門取締役 ミケル B.ラスムッセン)では、原因不明の売上減少に悩んでいた企業が、社会人類学者の力を借り、センス・メイキングによって見事に問題を解決に導いた事例が紹介されている。

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