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「解雇の金銭解決」制度をどう考えるか

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現在、様々な規制緩和が検討されているなか、大きな注目を集めているのは「解雇の金銭解決」制度ではなかろうか。
大企業においては、マスコミで騒がれていたような「追い出し部屋」「キャリア推進課」等(労働者を精神的に追い込んで自主退職させるために用意された部屋・部署であり実際に仕事は与えられていないことが多い)のような部屋・部署が存在していたりする。中小企業においては違法・不当解雇が横行しており、労働者は泣き寝入りしていることも多い。
解雇は、非常にナーバスな問題だ。

透明で客観的な労働紛争解決システムの構築を目指して

2014年6月に閣議決定された日本再興戦略改訂版において、次のような方針が打ち出されている。

①「あっせん」「労働審判」「和解」事例の分析
 労働紛争解決手段として活用されている「あっせん」「労働審判」「和解」事例の分析・整理については、本年度中に、労働者の雇用上の属性、賃金水準、企業規模などの各要素と解決金額との関係を可能な限り明らかにする。
その分析結果を踏まえ、活用可能なツールを1年以内に整備する。

②透明で客観的な労働紛争解決システムの構築
 主要先進国において判決による金銭救済ができる仕組みが各国の雇用システムの実態に応じて整備されていることを踏まえ、今年度中に「あっせん」「労働審判」「和解」事例の分析とともに諸外国の関係制度・運用に関する調査研究を行う。その調査研究結果を踏まえ、透明かつ公正・客観的でグローバルにも通用する紛争解決システム等の在り方について、具体化に向けた議論の場を速やかに立ち上げ、2015年中に幅広く検討を進める。

 以上のように解雇の金銭解決には慎重を期すということだが、昨年末に行われた衆議院議員総選挙の結果からもこの方針は継続されるだろうし、2015年中にも制度の具体化を目指していくということだろう。

解雇が違法・不当とされても金銭での解決が現実的

私の顧問先でも「解雇したい従業員がいるがどうしたらいいだろうか・・・」という相談を受ける。現在の労働法等の枠組みの中では解雇には様々な規制があり、その解雇が有効と認められることは非常に少ない。そんなことは企業側においても十分理解していることも多い。

 しかし、中小企業においては人事制度等を作成し・運用し中長期的に人材育成をする余裕はないだろう。そもそも人事制度の存在自体が無い企業も多いのではないだろうか。

 「こうした制度が導入されれば、違法な解雇であっても、労働者は職場に戻れなくなってしまう。つまるところ、使用者にとってはお金さえ払えば労働者を解雇することができる制度であるために、会社は裁判で負けるリスクなどを考慮せず解雇を行うようになるのではないか。したがって、この制度は導入すべきではない。」
というような意見をよく耳にするが、果たしてそうだろうか。

 そもそも(たとえ)違法な解雇があった場合に労働者は元の職場に復帰したいと思うだろうか。違法な解雇をされた労働者からすると、そのような会社でキャリアを積んでいこうとは思えないだろう。実際、解雇が違法もしくは不当な解雇と判断された場合において、元の職場に戻るケースは非常に少なく、金銭で解決しているのが現状だ。

 であるならば、「解雇の金銭解決」制度は使用者・労働者双方にとって前向きに捉えるのがいいのではなかろうか。
「解雇の金銭解決」制度が導入されれば、使用者にとっては金銭によって微妙な利益調整を提案できるし、労働者にとっては解決金を請求できる権利が保障されるメリットがある。

 運用方法等の問題はあるが、労使双方にとってメリットも多く前向きな議論を期待したい。


【社会保険労務士たきもと事務所 代表・社会保険労務士 瀧本 旭】

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