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雇用の多様化とモノの伝え方

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雇用の多様化とモノの伝え方

昨今、良いか悪いかは別にして職種が多様化している。90年代前半までは正社員と、これを支える周辺労働力としてパート労働者が存在するぐらいであった。しかしこれ以降、日本経営者団体連盟(現、経団連。以下「日経連」とする)が1995年に提言した『新時代の「日本的経営」―挑戦すべき方向とその具体策』を契機に、派遣社員・契約社員・請負・パート、アルバイト・日雇派遣といった非正規の形態が注目され、これらに属する人達が徐々に増やされていった。雇用流動化の議論が出始めたのもちょうどこの頃である
雇用の多様化とモノの伝え方

日経連は「雇用ポートフォリオ」と称して雇用流動化を推進した。それが今に続いており、非正規社員の割合は約4割にまで到達しようとしており、先進国では異常な事態と言わざるを得ない状況に陥っている。冒頭で「良いか悪いかは別にして」と断ったのは、雇用が多様化しているのは形式的なもので実態が伴っていないからだ。雇用形態のチャンネルが多岐に渡っているに過ぎず、やる仕事の中身や内容(待遇面は別にして)はほとんど差がない職場が多い。このように雇用の多様化は、同じ職場でも様々な形態で働く人達が存在する環境を生み出した。

冒頭で示した通り、同じ職場でも様々な雇用形態で働いている人達がいる現実がある。さらに、ここに成果(結果)が求められるものだから、より一層職場は荒廃の一途を辿ることになってしまう。
例えば、正社員以外の雇用形態に属する人達からすれば「これは正社員のやる仕事で自分達の仕事ではない」とか「高い能力を望まれても、それは優遇されている正社員に求めるべき」といった思考に陥りがちだ。一方の正社員からみた非正規社員に対しては「ずっと会社にいる人達ではないから責任感がない」とか「指示した業務だけしかやらず主体性が感じられない」といった感じである。

つまり雇用形態の多様化は、形態の違いを鮮明にする分、お互いの勝手なイメージを作り上げ、目に見えぬ高い壁によって業務遂行の阻害やコミュニケーション不足を誘発する危険が潜んでいる。だからこそ、“モノの伝え方”が重要になるのである。上司から部下への指示命令、部下から上司へのお伺い、同僚間のやり取り、他部署・他部門間のやり取り等々だ。仕事をする以上、すべての面において意思疎通が要となる。雇用形態が様々で置かれた環境が違えば考え方や思うことも異なるから、その溝を埋めるためにも企業はコミュニケーション力を持ち合わせた者をより一層重要視する。

さて、上司は部下に仕事を任せる時、どこまで進んだら一回自分にチェックをさせるよう促すとか、具体的な期限を示した上で任せているだろうか。一方の部下は、仕事を任された時にただ漫然と受けていないだろうか。曖昧な指示があったら、なるべく具体化するよう詰めているか。自分なりの判断で最後まで仕事を進め、全部完成した段階でいきなり上司の決済を取ろうとしていないだろうか。

ここでそれぞれの立場で考えてみよう。
上司からすれば、状況判断して自分で考え臨機に行動して欲しいというのが本音かもしれない。しかし、上司による進捗状況のチェック時期は個人差がある。上司自身が自分自身を一番よく知っているのだから、自分がチェックしやすい時期を具体的に指定して任せれば良いのである。

一方の部下からすれば、上司の指示が的確だったら苦労しないのに…と思うだろう。でも的確な指示が来ないのなら、自分が的確なものへと変えていけば良い。期限なども人によって捉え方に差がある。「今月中旬までに」という指示であれば、それが15日なのか20日を示しているのかその場で確認した方が後々の認識違いによるトラブルを防止できる。

周囲に変わってもらおうと思ったら、まずは自らが変わらなければならない。上司が悪い、部下が悪い、派遣・契約だから…とどこか人任せや周囲のせいにして自己弁護をとろうとしていないだろうか。雇用形態や立場の違いによって考え方が異なるからこそ、曖昧なものは自らがアクションを起こしていくことを心がけ、その溝を埋める努力をしてみてはどうだろう。これこそが企業が求める真のコミュニケーション力であり、相手へのモノを伝える時の礼儀である。

お互いがこのように意識し考えて行動すれば、余計な隔たりを生むことはなく、職場の荒廃も防止できるはずだ。いま一度、自らの“モノの伝え方”を振り返ってみて欲しい。どんな仕事でも一人では何もできない。職場内のチーム力は、組織力そのものである。


【SRC・総合労務センター、株式会社エンブレス 特定社会保険労務士 佐藤正欣】

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