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中小企業の人事評価制度はエコヒイキを目指せ!?

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「公平にして公正な評価」を目指して人事評価制度を導入したが、かえって従業員から不満が出た、というのはよくある話である。はたして、どこからも不満の出ない完璧な評価制度というのは実現可能なのだろうか。

完璧な人事評価制度はあるのか?

巷に人事評価制度の書籍はあふれているが、どれを読んでも今ひとつしっくりこない、という人事労務担当者も多いのではないだろうか。

本に書かれている通りにしたら不満が出ることも多いし、いまだ多くの中小企業が、社長が鉛筆なめなめで従業員を評価し、昇給・昇進・賞与支給を行っている。

それでうまくいっているうちはよいが、従業員が増えてきてさまざまな問題が発生してくると、それらの解決を図るため、人事評価制度導入を考えるようになる。

筆者もそういった中小企業の人事評価制度導入や運用のお手伝いをしているが、ご相談を受ける際、「完璧な人事評価制度というものはない」ということを初めにお伝えしている。

もしも完璧な評価制度があったのであれば、全企業が同じ評価制度を導入しているはずだが、そうではないのが実情である。組織のステージや抱えている問題によって、どのような評価制度がよいかは違ってくるものだ。

時代や環境の変化に応じ、人事評価制度も変わっていく。したがって、最初から正しい人事評価制度を策定しようとせず、不都合が生じたら、制度を変えていけばいい、ぐらいの気持ちで始めるとよい。

人事評価制度導入の際、「頑張った人が頑張っただけ報われる制度にしたい」という経営者は多い。そのような制度をつくるには、第一段階として、会社が求める人材像を明確にしなくてはならないが、筆者は併せて「エコヒイキしたい人はどんな人ですか?」と、聞くようにしている。

「求める人材像」を聞いたときはときには絵に描いたような理想の人物である場合が多いが、「エコヒイキしたい人」はわりと現実的な人物であることが多いからだ。

ではなぜ、経営者にとって「エコヒイキしたい人」が存在するのだろうか?

公平を追求しているのに公平にはならない矛盾

人間は自己愛が強い動物である。よって、自分が誰よりも苦労し、誰よりも組織への貢献度が高いと思い込む。社会心理学上、こうした人間の性質を「エゴセントリック・バイアス」と呼ぶそうだ。

社会心理学者のミッシェル・ロスとフィオレ・シッコリーが、学生寮に住む37組の夫婦に対して、それぞれの家事分担の比率を尋ねたところ、7割を超える夫婦が、自分のほうが相手よりも家事分担が多く、貢献度があると回答したという。

企業においてもこのような「エゴセントリック・バイアス」は見られ、これこそが、“公平にして公正であるはずの評価制度”に不満を抱かれる原因になっている。

皆、心の中では一番自分が頑張っていると思っている。それなのに、公平・公正な評価制度の結果、自分よりも頑張っていないはずのあの人のほうが評価が高かった、となると、「この評価制度は公平・公正ではない」と感じてしまうのだ。

公平・公正な評価制度のもと、悪い評価を下された従業員は、評価制度のことを悪く言うことはあっても、決して誉めることはない。人を「評価する」こと自体は簡単だが、「公平にして公正に」評価することは、それだけ至難の業なのだ。


それなら、「公平にして公正」という難題の追求はやめにして、あえて評価項目に社長の「エコヒイキ」項目を挙げてみてはどうだろうか?

「エコヒイキ評価制度なんてけしからん」と眉をひそめる方もおられるかもしれないが、中小企業においては社長が一番仕事ができる人である場合が多く、社長がやって欲しいことをやってくれる人が大勢いれば、それだけ業績も上がる。

「エコヒイキ項目」を挙げ連ねて公表すると、驚いたことに、それはすでに「エコヒイキ」ではなくなっていることにお気づきだろうか?

公表された「エコヒイキ項目」が、誰もが取り組める項目で、且つそれに対する頑張りがきちんと評価される仕組みができれば、その時点ですでに「エコヒイキされる人」は会社に存在しなくなるのである。

ただし、この「エコヒイキ項目」の策定については、注意事項がある。決して、評価する段階になった時に“後出しジャンケン”的に、項目を追加してはいけない。必ず前もって「エコヒイキ項目」を公表し、誰でも取り組めるようにしておくことが大事である。また、各項目を策定する際は、感情が波立っておらず、心が平和な状態で臨む必要がある。

「ノブレス・オブリージュ」という言葉もある。地位の高い人にはそれに相応しい義務があるという意味だ。できる限り「公平にして公正な評価」を作り上げることから経営者として逃げてはならない。企業で上に立つ人は、常に「権利」もあるが、部下の人生を思いやる「義務」もあるということを肝に命じておきたいものだ。


松田社労士事務所
特定社会保険労務士
産業カウンセラー   松田 法子

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 経営プロ編集部

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経営者・事業部門責任者から部長・課長・リーダー層まで、経営の根幹を支える人たちの成長を支援するパートナーメディアを目指します。日々の業務に役立つニュースや小ネタ、組織強化や経営理論まで幅広く学べる記事を提供します。

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