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「できる」と「わかる」ということ

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 若年層の労働力が不足していることは周知の事実である。だからどの企業も若手の採用に積極的だ。しかし、若い労働力がなかなか中小企業にまでまわってこないことも事実である。仮に採用することができたとしても、その後のフォローがうまくいかずに辞めてしまうこともある。このような事情から、既に在籍する社員の教育を充実させて底上げを図り、定着率を向上させるということが再び見直されている。しかし、社員教育を進めていく上で、どの企業も当たり前すぎて気にも留めない大切な点があるように感じる。それは、社員が「わかる」ということと、「できる」ということの違いである。そこで本稿では、この両者について考えてみたい。

わかっていても、できない

 「わかる」ということは「理解している」という意味で捉えることが一般的だ。だから、上司と部下のやり取りのなかで、部下が「わかっています」と答えれば、「そうか、理解しているんだな」と考えてしまう。これがギャップとなり、「わかっていると言っていたのに、わかってないじゃないか!」ということに繋がる。では、社員が嘘をついているのだろうか。筆者は違うと思う。実際に社員は「わかっている」のだ。
 では、なぜ社員はできないのか。それは、「わかる」ということと、「できる」ということは違うのであって、両者を区別して考えなければならない点に理由がある。

 ある仕事を指示する際、時間の使い方という点で上司が部下に対して指導した事例がある。その上司は、スティーブン・R・コヴィーが著書の中で提唱する4象限(緊急度が高い仕事と、そうではない仕事、重要度が高い仕事と、そうではない仕事)を用いて、月・週・日単位に落とし込んで仕事を割り振ってから進めることを部下に対してアドバイスした。これに対して、部下は「わかっています」と返答した。これに安心した上司は仕事を任せたが、数日経過しても、一向に進捗状況があがってくる訳でも、完成された仕事の報告がある訳でもない。痺れを切らした上司が部下に状況確認をすると、時間管理が甘く、重要度・緊急度への割り振りもバラバラであった。

「できる」と「わかる」ということ

 ここから推察されることは、部下は、緊急度の高低・重要度の高低という観点から仕事を時間管理すべきだということは「わかっている(理解している)」のである。しかし、この仕組みは理解しているが、実際にこれをベースとして目の前にある仕事を捌くことが「できない」のである。いわゆる頭では理解しているけれども行動に移せない(伴わない)状態である。子供が親に「早く宿題をやりなさい!」と言われ、「わかってる! 今やろうと思ってたのに……」という、どの家庭でもありがちな光景と実によく似ていると言えないだろうか。したがって、「わかる」と「できる」は区別して考えなければならない。換言すれば、わかっていれば、できるということには必ずしも繋がらないということだ。
 これらは一見するとあまりに当たり前過ぎて、見失いがちである。しかし、社員の教育において、緻密に考えていく必要がある。先で示した事例のように、社員が「わかる」と言っても「できる」とは限らない。実際に自らが担う仕事の中身まで「わかる」状態でなければ、言っていることと、やっていることの行動がちぐはぐになってしまうのだ。

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