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国が地域医療を滅ぼす日 ―― 迫りくるデュオ・ピークスの脅威

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『国が地域医療を滅ぼす日 ―― 迫りくるデュオ・ピークスの脅威 -』(大野 健次 著/ワニブックス)

 本書は日本で生活する日本人すべてに関係がある警告の書である。特に65歳以上の高齢者が4人に1人となった現在、もはや他人事ではない。著者は、金沢の城北病院で、「無差別平等の医療・介護」を実践してきた院長。貧しい人の医療費を免除したり差額室料をとらなかったりと、利用者の立場に立った病院運営を徹底的に推進してきた。
 その院長が、2006年の小泉内閣の診療報酬の引き下げによって多くの病院が赤字に転落し、廃業を余儀なくされたと告発している。5年間で全国240もの病院が消滅しているという医療崩壊は、かなり衝撃的である。
 副題にあるデュオ・ピークスというのは、超高齢化のピークを迎えるのが2025年、死亡者数のピークが2040年、この二つのピークが危険だという意味で使われている。しかし、真の脅威は国策だというのだから、背筋が寒くなる。
 第3章には、医療ソーシャルワーカー(MSW)による現場報告が20の物語となって掲載されている。そこには高度経済成長を支えてきた人たちが、高齢化して貧困から抜け出せなくなるとどのように哀れな最期を迎えるか、病院がどれほど敷居の高い障碍となっていることか、といった話が次々と展開される。
 その他、TPPが締結されると医療保険の自由化による混合診療が導入されて、WHOが絶賛する国民皆保険の崩壊のおそれがあること。医療費が高騰するのは高齢者の増加ではなく、高度化した医療そのものに原因があることなど、現代日本の医療の在り方や介護の問題などがコンパクトながらも鋭く提起されている。
 それにしても認知症の介護などの深刻な問題は、今後さらに増加することが予想されているのに、親身になって家族などとの相談にのるMSWが、診療報酬の対象外であるとは、驚き意外のなにものでもなかった。早急に問題解決を図らなければ、医療現場からは過重労働に耐えられなくなった悲鳴だけが木霊のように聞こえてきそうな気がする。そのために残された時間はあまりない。
『国が地域医療を滅ぼす日 ―― 迫りくるデュオ・ピークスの脅威 -』(大野 健次 著/ワニブックス)

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