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僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。

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『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。――東大発バイオベンチャー「ユーグレナ」のとてつもない挑戦』(出雲 充 著/ダイヤモンド社)

 ユーグレナとは和名をミドリムシという藻類の一種で、体長約0.05mmの微生物だ。植物と動物両方の性質を持っているので、野菜・魚・肉に含まれる59種類の栄養素がとれる。本書はこのユーグレナの大量培養に世界で初めて成功し、その特性を活かして多角的な事業を展開する株式会社ユーグレナの社長によるサクセスストーリーである。

 著者は東大在学中の1998年、学外活動の一貫としてバングラデシュを訪れ、穀物はあっても、他の必要な栄養素が取れないことが栄養不良を引き起こしていると知り、衝撃を受ける。その体験をきっかけに、将来の目標が「国連に入って飢餓をなくしたい」から「ビジネスを通じて餓えに苦しむ人に栄養素を提供していきたい」に変わった。そして、文系学科から農学部へ転部。漫画『ドラゴンボール』に登場する栄養価の高い「仙豆」のような食品を探し求め、同じ農学部の天才研究者で、サークルで一緒に活動していた鈴木健吾氏から、ミドリムシの存在を教えられる。

 ミドリムシは機能性食品や化粧品、バイオ燃料、飼料にもなることから、活用が進めば地球の栄養・環境・エネルギーの3大問題を解決できる可能性を秘めた夢の生物だ。だが、培養がきわめて難しく、過去に多くの研究者がチャレンジしながら失敗し、研究は頓挫していた。著者は日本のミドリムシ研究の権威である大阪府立大学の中野長久教授から「10年は覚悟した方がいい」と言われ、「35歳で、ミドリムシとともに立つ」と心に決める。そして、卒業後に東京三菱銀行に就職し、終業後の全ての時間を使って、鈴木氏と共にユーグレナの大量培養に乗り出すのだが…。

 本書を読んで感心することがある。それは著者が手柄を独り占めしていないことだ。大量培養の研究をコツコツ続け、成功させたのは、現在同社の研究開発部長である鈴木氏であること。自分たちの成功は、ミドリムシへの理解がない時代に何十年も研究を続けてきた研究者の業績の上にあること。石垣島での培養が可能になったのは、クロレラ販売会社の跡取り息子である福本拓元氏(現在、ユーグレナ社 取締役 マーケティング担当)の支援によるものであること等々、お世話になった人、彼らの人柄と功績を明確に記し、深い感謝の意を表している。

 ユーグレナ社は創業当初、ライブドア傘下のファンドから出資と融資を受けていた。ライブドア事件後、パートナー企業が一斉に手を引き、倒産の危機にまで追い詰められた3年間、一緒に起業した仲間たちは、高学歴にも関わらず薄給の苦しい状況に堪え、愚痴一つ言わずに耐え抜いてくれた。それはひとえに、筆者の人柄によるものだろう。リーダーがどんなに高いビジョンを掲げ、どんなにいいアイデアを思いついても、それに賛同し、支えてくれる人がいなければ、起業は成功せず、事業は継続しない。それにはトップの志の高さと人徳が不可欠だということを本書は語っているように思う。
『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。――東大発バイオベンチャー「ユーグレナ」のとてつもない挑戦』(出雲 充 著/ダイヤモンド社)

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