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沈みゆく大国アメリカ

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『沈みゆく大国アメリカ』(堤 未果 著/集英社)

 かつての『自由の国アメリカ』が、今では『不自由の国アメリカ』となりつつある…と、思わず溜め息をつきたくなる読後感である。
 本書は、オバマケア(医療保険制度改革)がもたらしたアメリカの医療崩壊の現実を綿密な取材で次から次へと浮かび上がらせていく。

 日本のような国民皆保険制度がないアメリカでは、多くの国民は民間の医療保険に加入している。しかし、保険料の支払いが困難で医療保険に加入できない中・低所得者などは、病状が悪化するまで医療を受けられない人も多く、その数は実に国民の6分の1にものぼる。
 オバマケアはこうした人たちを救済するため、民間より安価な公的医療保険への加入を国民に義務付ける制度として登場した。この“医療保険制度改革法”が目指したのは、国民のための医療保険だったはずなのだ。
 しかし蓋を開けてみれば、そこにあったのは保険会社や製薬会社、ウォール街などの莫大な資金力を持つハゲタカたちの“打ち出の小槌”という実態であった。
 たとえば、年収9万ドル(900万円以上) の家庭が高額な医療費によって自己破算する悲劇が珍しくない。そしてオバマケアによって低所得者も医療の恩恵を受けられるはずだったのに、その複雑さと低価格のためにそれを扱う医師が見あたらないという問題が深刻化している。アメリカでは、医者はお金持ちのリストから消えていく職業であり、自殺率1位も医者だという。がん治療薬は自己負担、安楽死薬なら保険適用、一粒10万円の薬など、まるでフィクションのような現実に笑いが止まらないのは、保険会社や製薬会社、ウォール街の面々である。
 こうした強欲資本主義の次のターゲットが、なんと日本の『国民皆保険制度』だというのだから恐ろしい。「保険証が一枚あれば、いつでもどこでも誰でもが医療を受けられる」制度を、WHOが絶賛し、世界40カ国以上で導入されている。今、この世界でも希少な日本の医療制度に魔の手が忍び寄っているというのだ。
 著者は続編『沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉』で、日本の宝『国民皆保険制度』を死守するための啓発と、未来への提言を盛り込んでいる。 
『沈みゆく大国アメリカ』(堤 未果 著/集英社)

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