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命運をわけたリーダーたちの一手

第7回  中途採用で培ったノウハウを新卒採用に活かし、事業と社員の成長の両立を実現(Chatwork株式会社)

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今回のリーダー:Chatwork株式会社<br>執行役員CHRO兼人事広報本部長 西尾 知一氏</br><br>人事広報本部人事部 マネージャー 内田 良子氏</br>

今回のリーダー:Chatwork株式会社
執行役員CHRO兼人事広報本部長 西尾 知一氏

人事広報本部人事部 マネージャー 内田 良子氏

ベンチャー企業では業績が拡大する時、戦力となる人材が足りなくなることが起きがちだ。その際、安易な採用試験を行い、自社にとって様々な意味でデメリットの大きい人材を獲得してしまうケースがある。象徴的なケースは、入社後に人間関係で摩擦が生じたり、担当業務を遂行する力がなかったりなど、問題が続出する場合だ。このような社員が増えると、業績拡大の勢いを失いかねない。だからこそ、キャリアやスキル、性格、社風、業務の仕組みを心得ているか否か、仕事の仕方や求められるレベル、人間関係の構築能力、コミュニケーション力の有無など多角的に丁寧に評価し、精度の高い採用試験を行う必要がある。だが、ベンチャー企業がこのような採用を実施するのは容易ではない。今回取り上げる企業は、ビジネスチャットツールを展開するChatwork株式会社(本社:大阪市、代表取締役CEO兼CTO山本正喜、従業員153人 ※2020年9月末日時点)だ。同社は業績拡大に伴い、東京証券取引所マザーズ市場へ新規上場する一方で、丁寧な中途採用、新卒採用を続けている。そんな事業と社員の成長のバランスを保つ事例について、執行役員CHRO兼人事広報本部長 西尾知一氏と人事広報本部人事部 マネージャー 内田良子氏にお話を伺った。

リーダープロフィール
西尾 知一(にしお ともかず)

日本放送協会(NHK)やシナジーマーケティングを経て2017年にChatworkに入社。2020年7月、執行役員CHRO兼人事広報本部長に就任。

内田 良子(うちだ りょうこ)
新卒で銀行へ入行し、営業や資産運用を担当。転職後は、小売、流通系企業で人事を経験する。2018年にChatworkに入社。
IT人材の採用で掲げている「現場志向」

IT人材の採用で掲げている「現場志向」

2000年に創業した同社は、2011年から、ビジネスチャットツール『Chatwork』のサービスを開始。メッセージのやりとりの他、タスク管理やファイル管理、 音声通話やビデオ通話ができるツールとして、現在多くの企業で利用されている。同社は2019年9月に、東京証券取引所マザーズ市場に上場を果たし、成長拡大を続ける会社だ。

Chatworkは、創業期から毎期、速いスピードで業績を拡大していくため、即戦力である20~30代の人材の中途採用に重きを置いてきた。最近3年間の中途採用試験では、69人を正社員として採用している。2020年9月末時点の従業数は153人。職種の内訳は、開発系(エンジニアなど)68人、ビジネス系(営業やマーケティングなど)62人、管理系(人事や総務、経理など)23人だ。

現在、IT業界では、特にエンジニアの人手不足が深刻化している。そのため、同社はエンジニアの採用、定着、育成に一段と力を注いでいる。中途採用の方針として掲げるのが、「現場志向」。

その1つが各部署のマネージャー(部長)に権限を大幅に委譲し、現場のニーズに合致した人材を獲得することだ。選考の方法や時期は、マネージャーが人事広報本部に申請し、人事広報本部はマネージャーの考えや意向をできるだけ尊重したうえで承認をしている。

採用方法は各部署や時期により若干異なるが、エンジニアの場合は求人サイト、転職エージェント、リファラルのル―トが多い。現場志向を徹底させるために、転職エージェントのルートはマネージャーがエージェントのコンサルタントと直接会い、求める人材やスキルを伝え、人材の紹介を受けている。通常の中途採用はまず、書類選考から始める。最も重視するのが、エントリー者のスキルだ。

「当社が求めるレベルは相当に高いので、スキルを丁寧に確認します。そのレベルのスキルを身につけていると思える人材は30歳前後。ただ、20代であっても、今後、伸びる可能性が高い人は通過させることがあります」(西尾人事広報本部長)

書類選考の通過後は、1次面接、体験入社、2次面接(最終)と進んでいく。1次面接は、配属予定部署のマネージャーと中堅のエンジニア(一般職)の2人とエントリー者1人で、約1時間実施する。面接官の2人がキャリアやスキルを確認しながら、人柄を含め、一緒に仕事ができるか否かを見る。通過者には、コードを書かせるなどの課題を与え、次のステップである「体験入社」の時に課題を持参してもらう。

※下部の写真はコロナ禍以前の様子となり、現在は全社員が在宅勤務推奨となっています。
「体験入社」でカルチャーに合う人材であるかを念入りに確認

「体験入社」でカルチャーに合う人材であるかを念入りに確認

「体験入社」では、エントリー者が東京オフィスもしくは大阪オフィスで配属予定の部署に加わる。以前は「1日」であったが、現在はコロナ禍の影響で「オンラインによる体験入社」を時間短縮したうえで実施。コロナ禍の前は仕事の依頼をされたり、ランチを一緒に食べたりなど、1日中、配属予定部署のマネージャーやエンジニアと一緒に行動を共にした。同社はこの「体験入社」は特に重視しているという。それは、入社後、配属部署の社員たちと良好な関係を作り、高いパフォーマンスの仕事をすることができるどうかを判断するためだ。

「中途採用の場合、勤務した会社のカルチャーに染まっている人が比較的多く見受けられます。当社にもカルチャーはあるが、双方の違いが大きいと入社後にミスマッチとなりえます。カルチャーの違いはどれぐらいあるのか。克復できるものか否か。これらを社員と一緒に行動し、配属部署の部員全員で確認します。過去の中途採用試験では、体験入社をしなかった時期はありますが、その時に入社した社員の定着率はやや下がる傾向があったのです。定着率を上げ、パフォーマンスを上げていくためにも「体験入社」は、大切な試験と位置づけています」(西尾本部長)

「体験入社」の最後は、1次面接通過後に与えられた課題をエントリー者が、マネージャーやエンジニアの前で発表する。そして、それを受けてマネージャー、エンジニアが質問を行う。西尾本部長によると、「質問だらけ」になるほど白熱した内容になるという。面接官はやりとりでの回答や受け答えの様子、態度も丁寧に観察する。発表後も、全社員が使うチャットワークでエントリー者とマネージャー、エンジニアが議論することもあるという。

課題発表の後は、マネージャーが同席したエンジニアの意見を聞き、合否を決める。エントリー者の約7~9割は、この時点で不採用になるそうだ。合格となったエントリー者は、配属予定の部署の担当役員と人事広報本部長の2人との2次面接に進む。

「2次面接では、あらためて人柄も確認しますが、当社のカルチャーと合うか否かをやはり重点的に見ています。2004年の設立以来、柔軟で働きやすい職場づくりをこれまで行ってきました。自由な社風である一方、本人が仕事のパフォーマンスにしっかりと向かい合うことを当社は大切にしています。自分を律して仕事ができる人であるかを念入りに確認したいため、何度もカルチャーが合うかどうかを見ているんです」(西尾本部長)

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