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ミドルの戦略的活用による組織活性(1/5)

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ミドル・マネジメントの機能低下

ミドル・マネジメントの機能低下

 皆さん方は、「ミドルの戦略的活用による組織活性」というような言葉を聞いて、何を思い浮かべられますか?恐らく、ミドル・マネジャーの戦略的な活用を思い浮かべるのではないでしょうか。例えば、私の先輩である野中先生のミドル・マネジメント論などが有名です。また、最近は「最近ではミドル・マネジメントの機能が低下している、日本全体の組織が低下してきている」という議論が多く聞かれます。例えば、経団連の報告書では、「取り巻く厳しい競争環境下において、主体的に考え、行動できる実行力、リーダーシップが必要である。自社の経営戦略や方針を噛み砕いて部下に伝えたり、部下の要望や意見に耳を傾けて上司に進言したりするなどの発信力や組織調整力などが必要である」と報告しています。これがよく言われるミドル問題です。

 実際、「国際比較で見た日本のミドル・マネジャー」というリクルートワークス研究所が発表した面白いデータを見てみると、中国、インド、タイ、アメリカ、日本を比較して、普段、「成果を出すためにどんなことをやっていますか?」ということを聞いています。『部下の裁量にゆだねる、部下の長期的な能力を高める、チームワークを重視する、新しいやり方を試す、リスクをとる、不測の事態に自ら対処する』といった質問です。

 これで見てみると、おしなべて日本がかなり低いんですね。『部下の裁量にゆだねる』というのが、インドでは26.5%あるのに対して日本では7.0%しかない。『チームワークを重視する』で一番高いのは36.4%のタイ、日本はアメリカと並んで19.8%。『部下の長期的な能力を高める』も日本は、12.8%と一番低い。新しいやり方を試す、リスクをとる、不測の事態に自ら対処する、というのも同じ。国際比較を見ても、日本は何となく問題を抱えているなあ、というのが分かります。

人生を見通せない“キャリアミスト”

 こうした流れに対して、もう一つの見方があります。例えば、経営学者の金井先生です。先生は、ミドルというのは「日本では、組織内の階層上のミドル、つまり中間管理職の立場にある人をさすばかりでなく、人生の途上での壮年期、もしくは中年期に入っている人。人生の真ん中に来てキャリアを歩む上でもキャリア中期を過ごしつつある人」と説明します。

 本日、今日考えたいミドルというのは中高年の人たち、40歳くらいまでにキャリアを歩んできた人たちのことで、さまざまな組織で活動されてきた人たちが沢山います。大きな問題なのは、企業の中でその人たちが活用されているのか、ミドルの人たちがちゃんと自分のやるべきことを理解して、頑張ってその目標を達成しようとしているのかということです。

 単にミドル・マネジャーが機能しなくなっただけではなくて、ミドル世代の人たち全体がミドルの仕事を達成していない状況にあるのではないか。ミドル自身が中間期にあるにもかかわらず、それ以降のキャリアなり人生を見通せなくなってきているのではないか。“キャリアミスト”という言葉を学問の世界では使いますけど、霧がかかってきている現状が浮かんできます。

 実際、何も役職についていないミドルの方たちはもっとひどい状況になっています。キャリア展望が見えなくなったミドルが不活性化したりモチベーションが下がったりしている。総じてミドルが活用されていない企業が増えてきたのではないでしょうか。せっかく若いときから育成してきて能力を高めた人たちが、活用されてないということがあるとすれば、企業の人材マネジメントとしては非常に大きな問題であるといえます。

〔HR EXECUTIVE FORUM Vol.6 9/4講演【ミドルの戦略的活用による組織活性】より〕

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プロフィール

一橋大学大学院 商学研究科 教授 守島 基博 氏

一橋大学大学院 商学研究科 教授 守島 基博 氏

一橋大学大学院商学研究科教授。人材論・人材マネジメント論専攻。
80年慶應義塾大学文学部社会学専攻卒業。86年米国イリノイ大学産業労使関係研究所博士課程修了。
人的資源管理論でPh.D.を取得後、カナダ国サイモン・フレーザー大学経営学部助教授。
90年慶應義塾大学総合政策学部助教授、98年同大大学院経営管理研究科助教授・教授を経て、
2001年より現職。著書に『人材マネジメント入門』、『人材の複雑方程式』
(共に日本経済新聞出版社)などがある。

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