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次世代の経営人材をいかに育てるか(4/5)

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市場構造・事業構造・収益構造の新たな可能性について仮説をたてる

市場構造・事業構造・収益構造の新たな可能性について仮説をたてる

市場構造、事業構造、収益構造の間にはリンケージがあります。市場の構造が今後どう変化するのか、その中でどのようなポジションを取れば最も有利な展開ができるのか、そのためにどのような事業構造が必要になり、それが収益構造にどう影響するのか。これらの新しい可能性について仮説を立て、新たなリンケージを最初に発見した者が勝つのが、ビジネスというゲームです。
では、どうやってこのリンケージを発見するのか。ここでは分かりやすい事例として証券会社を例に挙げます。まず市場構造の解明のため、「投資アドバイスを求める客層」と「徹底した格安手数料を求める客層」に分類してみましょう。その上で、各々の市場規模や売買量を調べてみることで、市場の構造が浮かび上がり、自社がターゲットとすべき客層が定まってきます。
ターゲットとする客層が定まると、次は事業構造が決まってきます。「投資アドバイスを求める客層」をターゲットにする場合、店舗や営業員に依存した事業構造になるでしょう。「格安手数料を求める客層」をターゲットにするなら、徹底したオンライン化が必要になります。市場におけるポジションの取り方が違うと、事業構造の作り方も違ってきます。それがそのまま収益構造に跳ね返ります。店舗型ならお店と人件費にコストをかけ、オンライン型なら広告宣伝費とコンピュータに費用をかけることになるでしょう。
また、市場の中のどこにポジションを取るかによって、事業価値にも影響が出てきます。オンライン証券が台頭してきた頃、店舗や営業員に依存した従来型の証券会社は軒並み赤字になる一方、オンライン証券は高い収益をあげました。その原因は市場におけるポジションの取り方にあります。オンライン証券会社は手数料の規制緩和とITの発達という環境変化を先取りし、新たな領域でいち早くポジションを取りました。一方、従来型の証券会社がポジショニングする領域では何十社という競合企業がひしめいています。しかも手数料規制の緩和により、デイトレーダーのような客層が従来型の証券会社からオンライン証券にどんどん流出していきました。それが収益性の違いに表れたのです。こうした市場構造・事業構造・収益構造の変化が色々な業界で起こっています。情報革命によりこれらの構造がどう変わり、顧客がどこからどこへ移動していくのか、こうした新しい可能性について仮説を立てられるのかが次世代の経営人材です。

メーカーの場合は、新しい技術を生み出さなければいけませんから、これら3つの構造以外にも仮説の立て処があります。こういう「機能」が実現できればこんな「新しい用途」を提供できる、それによってこれだけの「市場規模」が生まれるだろう、そのためにはこんな「要素技術」が必要になるといった論点についても仮説を立てられるのがイノベーター人材です。アップルの創業者のスティーブ・ジョブズも、アマゾンの創業者のジェフ・ベゾスもエンジニアではありませんが、世界中のエンジニアたちに勝ちました。人間科学に根ざした発想からイマジネーションを広げ、新しい用途や機能について仮説をいち早く見出せた人が勝つのです。

次世代の経営人材となるためには勇気を持つことも重要です。具体的な仮説を立てるほど、それが外れる確率は高くなるからです。それを恐れて一般論やコンセプトにとどまる人が多いです。こうしたやり方はリスクはありませんが、仮説を検証することはできません。ジョブズは「ステイ・フーリッシュ」の重要性を解きました。賢く見られたいと思わないことです。失敗を恐れず、愚かだと言われるのを恐れずに試掘を続けなければいけないということです。



〔経営プロサミット2015 6/1講演【次世代の経営人材をいかに育てるか~新しい経営環境の中で企業価値を高められる人材とは~】より〕

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プロフィール

ヘイ コンサルティング グループ<Br>代表取締役社長 高野 研一 氏

ヘイ コンサルティング グループ
代表取締役社長 高野 研一 氏

日本の大手銀行でファンドマネジャーなどを経験した後にコンサルタントに転進。現マーサー・ジャパン取締役などを経て、2006年10月にヘイ コンサルティング グループに参画。2007年10月より代表取締役社長に就任。
日本企業の経営改革とグローバル化を支援。特に、コーポレートガバナンス、ビジネスリーダーの育成とアセスメント、グループ経営、組織・人材マネジメントに関する戦略・実行支援などに豊富な経験を持つ。メーカー、金融、商社、小売などほぼ全業種にわたりコンサルティングサービスを提供。多くのクライアントからの信頼を得ている。ヘイグループでは、日本・韓国のマネジメントを担うとともに、ガバナンス・コミッティーのメンバーを務める。
神戸大学経済学部卒業、ロンドン・スクールズ・オブ・エコノミクス(MSc)修了、1992年6月 シカゴ大学ビジネススクール(MBA)修了。
著書 『超ロジカル思考』(日本経済新聞社)、『ビジネスリーダーの強化書』(日本経団連出版)、『勝ちグセで企業は強くなる』『グループ経営時代の人材マネジメント』(ともに東洋経済)他、講演・執筆多数。

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