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逆境からの再生 -イノベーションのジレンマを超えて-(5/5)

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コダックは特殊な『イノベーションのジレンマ』である

コダックは特殊な『イノベーションのジレンマ』である

クレイトン・クリステンセン教授の著書『イノベーションのジレンマ』では、巨大企業がある製品で市場を席巻しても、ベンチャー企業が画期的な別の製品を出すとすぐに市場を失ってしまうことを「イノベーションのジレンマ」と定義し、コダックを典型的な例に挙げています。しかしコダックは自らカニバリズムをした例であり、クレイトン教授の指摘が必ずしも正しいと私は考えません。つまりコダックは、自らの発明で自分の脚を食う、ということを運命的にやらざるを得なかった特殊な例なのです。
コダックは世界で最初にデジタルカメラを発明しました。デジタルカメラが出なければフィルムの時代はまだ続いたでしょう。コダックもそれに気付いていて、発明後3年は製品を一切外に出しませんでした。満を持して少しずつ外に出したところ、製品化に関して日本企業のほうに優れた点があり、結果的に自らのフィルム市場を失ってしまったという皮肉に陥りました。

コダックには130年の長い歴史があり、国を代表する社会的な存在でした。コダックのファウンダーであるジョージ・イーストマンが世界で初めてフィルムを開発し、現在の写真技術の基礎を築きました。そのような、過去の、変えられない遺産を多く持っており、急激な変化への困難さで差がついたのではないかと考えます。特許の扱いについては、先に述べたように、もう少し早く売却していればチャプターイレブンに入らなかったし、全く違ったビジネスモデルになっていたのではないかと考えています。

コダックが再生できたのは、明確な再生ビジョンを持ち、全組織で危機感を共有し、ステークホルダーとしっかりコミュニケーションをとり、スピードと実行力で進めたことにあります。昨今もかつてハイテクの雄で優良企業としてのステータスをエンジョイした巨大企業が危機に瀕している例がみられますが、その再生のヒントはここにあるのではないかと考えます。コダックが正しいブランドイメージで再生できたことをこれからも発信し、皆さんに継続して注目していただければ幸いです。

〔経営プロサミット2015 6/2講演「逆境からの再生 -イノベーションのジレンマを超えて-
~コダックはいかにして苦境を乗り越え、B to CからB to Bへの転換を行ったのか。
その時、日本コダックが直面した課題とは~」より〕

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プロフィール

コダック合同会社 代表執行役員社長 藤原 浩 氏

コダック合同会社 代表執行役員社長 藤原 浩 氏

1981年、日本電子株式会社に入社。本社経営企画部配属後10年間の米国駐在を経て帰国。1995年から2006年までSAPジャパン株式会社において、代表取締役COO(最高執行責任者)兼CFO(最高財務責任者)を歴任。その間、売上20倍の急成長を支えた。2007年から株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパンにおいてヘルスケア部門の社長兼COOを務め、競争の激しい日本市場でビジネスの再編と成長を牽引。2011年7月、コダック株式会社 常務取締役に就任。2012年2月に米国本社Chapter11宣言と共に代表取締役社長に就任、事業再生をリードした。現コダック合同会社 代表執行役員社長。Kodak Koreaの社長を兼任。

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