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逆境からの再生 -イノベーションのジレンマを超えて-(4/5)

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商業印刷物に個別向け広告を載せて販促効果を上げる新しいマーケティング

商業印刷物に個別向け広告を載せて販促効果を上げる新しいマーケティング

再生後のコダックは5事業で展開しています。1つ目はプリントシステム事業です。商業印刷や新聞など通常の印刷物はプレートと呼ばれる原版にレーザーで描画し、版を作成し、印刷機にかけてその上にインクを乗せて刷る、という方法をとっています。主に印刷産業向けに一連の消耗品、プロセスの機器、ワークフローのソフトウェアを扱います。
2つ目はエンタープライズインクジェットシステム事業です。インクジェットのプリンターには版がなく、直接紙に何でも書けるという利便性があります。これを商業的に使える規模、スピード、コスト、クオリティにしたのがコダックのインクジェットシステムです。電車ほどの大きさの巨大なインクジェットの印刷機で、毎分900メートル、毎ページ違う内容が刷れる画期的な装置などを扱います。
3つ目はマイクロ3Dプリンティング&パッケージング事業です。包装の分野で、紙だけではなく立体的なものに印刷する技術を扱います。4つ目はソフトウェア&ソリューションズ事業で、印刷にまつわるITソリューションビジネスです。5つ目はコンシューマー&フィルム事業で、コダックはコンシューマー事業から離れましたが、映画フィルムの生産を続けています。また、コダックブランドを他社に提供し収益を上げています。

2つ目の事業で紹介したインクジェットの印刷機が面白いのは、新聞、広告を一部毎に内容を変えて出力できることです。ダイレクトメールでも、中身をその人の趣味に合わせた内容のダイレクトメールが作れます。版を使わない商業用のインクジェットは、色々なマーケティングの可能性を秘めており、非常に注目され、世界各地で導入が進んでいます。国内にはまだ例がありませんが、海外では、新聞全面で版を使わずインクジェットで刷っている会社があります。日本では、従来の輪転機にインクジェットのヘッドを付け、いわばハイブリットにして、同じ記事だけを一部だけ可変で印刷し、番号やゲーム性のある内容を載せる、ということが行われています。この新しい販促を導入しているのが、例えば中日スポーツや中日新聞、トヨタ自動車、ツタヤといった企業です。ユーザーに1人ずつ違ったQRコードを付け、ウェブに入ってどう回遊するか分析したところ、同じQRコードの広告の5倍、10倍のアクセス数になり、高いレンジで販促効果が得られると証明されています。ツタヤは地域ごとに異なるクーポンを刷り、地域ごとのクーポンの反応の違いを分析しています。

面白い分野をあげると、スマホなどで使うタッチパネルをアメリカで製造しています。従来のタッチパネルは中国でしかとれない希少金属を使わないと製造できません。コダックの銀塩フィルムで培った製造技術なら、銅の細かいメッシュを使い、ローコストで新しいタッチパネルをつくることができます。製品化して発売しつつあるところであり、コダックの今後の新しい顔となるでしょう。

コダックはビッグデータにも取り組んでいます。コダックのメインのお客さまは印刷業者ですが、彼らは競争力のあるコンテンツ作りのノウハウをあまり持っていません。技術的にどれほど綺麗に印刷できても、ニーズに合う消費者に届けないと意味がありません。そこで、情報を欲する人たちに届けようと、ビッグデータから濃い情報を抽出するよう取り組んでいます。ソリューションのポケットを増やし、経営者のあらゆる悩みに応えていく方針です。


〔経営プロサミット2015 6/2講演「逆境からの再生 -イノベーションのジレンマを超えて-
~コダックはいかにして苦境を乗り越え、B to CからB to Bへの転換を行ったのか。
その時、日本コダックが直面した課題とは~」より〕

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プロフィール

コダック合同会社 代表執行役員社長 藤原 浩 氏

コダック合同会社 代表執行役員社長 藤原 浩 氏

1981年、日本電子株式会社に入社。本社経営企画部配属後10年間の米国駐在を経て帰国。1995年から2006年までSAPジャパン株式会社において、代表取締役COO(最高執行責任者)兼CFO(最高財務責任者)を歴任。その間、売上20倍の急成長を支えた。2007年から株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパンにおいてヘルスケア部門の社長兼COOを務め、競争の激しい日本市場でビジネスの再編と成長を牽引。2011年7月、コダック株式会社 常務取締役に就任。2012年2月に米国本社Chapter11宣言と共に代表取締役社長に就任、事業再生をリードした。現コダック合同会社 代表執行役員社長。Kodak Koreaの社長を兼任。

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