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クオリティフォーラム2017 企画セッション「事業ドメイン・ブランディング:ビジョンがもたらす事業の持続的発展」

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事業ドメイン再定義の必要性

事業ドメイン再定義の必要性

次に、加藤氏は事業ドメイン・ブランディングを語るために欠かせない重要な質問を会場の参加者に投げかけた。

<質問>
昨今、「モノづくりからコトづくりへ」など事業が顧客にもたらす「コト」の重要性が説かれています。御社の事業は顧客の何の実現をサポートしていると言えますか?

この定義次第で、どのようなハード・ソフトを手がけるべきかがガラリと変わる。事業の定義の重要性は1960年代からすでに語られており、セオドア・レビット氏が「ドリルを買う人が欲しいのはドリルではなく穴である」と説明したことで有名だ。つまり事業は「製品」で定義してはならない、「価値」で定義せよ、ということだ。

では、なぜ今、事業ドメインの再定義が必要なのか。それは現代の製造業が厳しい状況に置かれているからだ。加藤氏は次のような問題点を指摘した。

●各社の技術力向上による均質化
●プロダクトライフサイクルの短縮化
●モジュール化による参入障壁の低下
●コモディティ化の進展

この状況を打開する方法として、加藤氏は「製品単品で勝負するビジネスからの脱却」を強調。複数のハード・ソフトの組み合わせで初めて達成される価値をソリューションビジネスとしてパッケージで提供する道を示唆した。従来は製品仕様(製品レベル)の差別化が行われてきたが、これからの時代は「価値次元(事業レベル)の差別化」を行うべきとした。事業ドメイン再定義はこの部分に大きな影響を及ぼすのだ。

事業ドメイン再定義のキーワード(1)顧客シェア

事業ドメイン再定義のキーワードのひとつが「顧客シェア」という新たな概念だ。顧客シェアとは、ある顧客が購入した特定の商品の購入金額に対する自社商品の割合を指す。つまり、重要な顧客の財布をいかに生涯にわたって牛耳ることができたか、という考え方だ。マーケティングのパラダイムはプロダクト・アウトからマーケット・インへ変遷したが、いずれも達成指標は市場占有率に着目する「市場シェア」だった。しかし市場の成熟後も市場シェアに固執し続けると、低価格プロモーションに陥り収益が下がる。成熟市場でブランディング(売れ続けるための戦略)が重視される時代は、達成指標を「顧客シェア」とする必要があるという。

理想的な顧客シェアは「自社が受け取る対価の合計÷○○に関する生涯支出総額≒ 1」である。「○○」は顧客の支出項目であり、家計で言えば家計簿の費目に相当する。加藤氏は、分母(〇〇に関する生涯支出総額)を大きく設定し、それでもなお分数が「1」に近づくよう分子を適切に定めることが重要だとする。つまり、分母を大きくするほど提供すべき商品・サービス(=分子)も増えるということだ。さらに「顧客シェアを突き詰めて考えると『我々は何屋なのか?』という問いの答えにたどり着く。これからの時代は、事業は製品で定義するのではなく『顧客シェアの分母』で定義すべきだ」とした。
事業ドメイン再定義のキーワード(2)顧客ロイヤルティ

事業ドメイン再定義のキーワード(2)顧客ロイヤルティ

事業ドメイン再定義の2つ目のキーワードは「顧客ロイヤルティ」だ。顧客ロイヤルティとは継続購買意向だけを指す言葉ではなく、「推奨意向(おすすめしたい)」「協力意向(アイデアを提供してあげたい)」、「交流意向(ユーザー間で交流したい)」といったブランドに対する良好な行動意向を意味する。

加藤氏の研究によると、顧客ロイヤルティは「ブランドが目指すビジョン・理想への期待(将来への期待)」と「ビジョンの下で生まれた製品に対する使用満足度(顧客満足、CS)」の両方から影響を受けて形成される。さらに紐解くと、CSは高いものの、将来への期待は低い顧客からは顧客ロイヤリティを獲得しづらく、単なるサプライヤーと見なされてしまう傾向が明らかになっている。つまりCS偏重の顧客ロイヤルティ向上施策には限界があり、ブランドがどんなビジョンを持っているかが問われているのだ。

そして顧客ロイヤルティを蓄積すべき新たなレイヤーこそが「ドメイン」だとした。ドメインとはコーポレートブランドと個別のプロダクトブランドの中間に位置するレイヤーだ。例えばPanasonicにおいては効率美容の商品群である「Panasonic Beauty」がドメインにあたる。コーポレートブランドの役割は「品質保証」であり、同社のような多事業展開の企業において一事業がコーポレートブランドを武器に市場で戦うのは至難の技である。一方で、個々の製品はコモディティ化して価格競争が激しい。このため着目すべきはドメインだと強調した。

加藤氏はこれから時代の経営の形について「ビジョンを中核に据えた信頼と期待の好循環経営をいかに目指すかが重要であり、これこそが事業ドメイン・ブランディングだ」とまとめた。

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