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よくわかる研修開発のポイント

第3回:研修の効果を測定するには

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社内研修を企画するとき、受講者があらかじめ設定したゴールに到達したかどうか、そして、会社の業務にどの程度の効果があったかを測定する方法は最初から考えられているだろうか。企画段階でここを考えておくことが、「なんとなく研修」から脱皮するためのポイントだ。面倒なようだが、順を追って考えていけば、研修内容自体もおのずとそこから導き出されるというメリットがある。まずは、伝統的な枠組みと、そのやり方を知っておこう。

カークパトリックの4段階評価モデル

研修のコスト削減や効果アップを考える場合、評価の枠組み自体が必要になる。それを提供してくれるのが、アメリカの経済学者・カークパトリックが1959年に提唱した「4段階評価モデル」だ。レベル1~4まで、それぞれ具体的な内容を見てみよう。

レベル1 反応(Reaction):研修に対する満足度を測る
これは通常、研修の終了直後に、受講者アンケートの形で行われる。アンケートの一般的な内容は、下記のようなものだ。

・全体的な評価:全体的な満足度、業務に活用できるか、期待は満たされたかなど
・講師への評価:講師についての満足度、話はわかりやすかったか、受講者への配慮があったかなど
・教材への評価:わかりやすかったか、必要な情報が含まれていたかなど
・受講環境への評価:部屋の快適さ、機材の充実度など


最近では質問紙方式だけでなく、オンラインでアンケートを準備しておき、パソコンやスマホから回答してもらう形式が増えてきた。

受講者が満足したかどうかは、研修を企画した側や講師からすると、とても気になるところだが、実はこれだけでは研修の効果を測るには不十分だ。一般的に、5段階評価のアンケートで3より下をつける受講者は少ない。そもそも評価の基準もあいまいだ。

また、楽しい研修であればアンケート結果はよくなるが、後に何も残らないのでは意味がない。研修内容が受講者の頭にしっかり入ったかどうかも、これだけではわからない。そのため、次のステップが必要になってくる。

レベル2 学習(Learning):研修で学んだことの習得度を測る
研修終了直後、または一定期間をおいた後、確認テストを実施して測定することが多い。

また、受講者が研修前から知っていた内容を研修の成果から排除するため、研修の前と後に同じテストを実施し、ビフォーアフターの得点差を学習に関する成果とすることも、よく行われている。

社内研修に初めて取り組む企業の場合、レベル2ですら実行されない場合がほとんどだ。受講者が寝ていてもとくに問題ない、といようなだらけた研修にしないためには、必要な過程である。

レベル3 行動(Behavior):研修で学んだことの職場での実践度を測る
研修とは、受講者の職場での行動変容をめざすものである。そこを考えれば、このレベルまで行われなければ、効果を測定したとはいえない。

方法としては、「フォローアップ調査」が一般的だ。研修から3ヵ月後、6ヵ月後など、期間をあらかじめ決めたうえで、参加者本人に下記のような内容を尋ね、どの程度行動変容したのかを測定する。

・研修で学んだことを実践しているか
・実践してどのような結果が出ているか
・実践してうまくいっていること
・実践してうまくいってないこととその理由
・実践しようと思ったが、できていないこととその理由
・今後の研修の改善のためのアイデアや意見


受講者本人だけではなく、上司に同様の内容を調査することも有効だ。「リーダーシップ研修」や「ハラスメント防止研修」であれば部下に、「営業スキル研修」であれば顧客にアンケートをとるのもよい。

レベル4 成果(Results):研修の結果、会社にもたらした成果を測る
いよいよ最後の段階だが、ここまでやっている企業はごくわずかだろう。しかし、だからといってやらなくてよいわけではない。それどころか、このレベル4を研修設計段階で考えるかどうかで、研修の品質に大きな違いが出てくる。

会社にもたらした成果というのは、具体的に次のようなものである。

・接遇研修:顧客満足度、クレーム発生率
・販売スキル:売上、販売数、コンバージョン率
・営業スキル:訪問数、販売数、売上、決定率
・リーダーシップ・コミュニケーション:エンゲージメント、従業員満足度、離職者数


これらの指標を見て「外部要因や、社内の別の要因の影響が大きすぎる」と思ったかもしれない。もちろん、そのような要素を排除することは難しいのだが、研修とは、最終的にこれらの指標を改善させる、つまり経営に資するものでなくてはならない。

研修の企画段階で、最初にレベル4の指標について、経営陣と話し合っておこう。成果を出したい数値は何で、そのためにどのような行動変容を起こすべきかを考える。そして、行動変容を起こすためにどのような学習内容が必要かを定める、という手順になる。

レベル4から逆算して研修を企画することで、研修自体の目的・ゴールがはっきりとし、次回のための PDCA サイクルを回すことも容易になる。よりよい研修のためには、有効な手段なのである。

李怜香(り れいか)
メンタルサポートろうむ 代表
社会保険労務士/ハラスメント防止コンサルタント/産業カウンセラー/健康経営エキスパートアドバイザー
http://yhlee.org

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プロフィール

 経営プロ編集部

経営プロ編集部

経営者・事業部門責任者から部長・課長・リーダー層まで、経営の根幹を支える人たちの成長を支援するパートナーメディアを目指します。日々の業務に役立つニュースや小ネタ、組織強化や経営理論まで幅広く学べる記事を提供します。

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