Q7:部下の意見を引き出し、適切なフィードバックを行うことで信頼関係を築く

米国のギャラップ社による、生産的な職場を生み出す指標「Q12(キュー・トゥエルブ)」シリーズの第7回目。今回は、Q7で部下から高い評価を得る方法を見ていこう。

米国のギャラップ社による、生産的な職場を生み出す指標「Q12(キュー・トゥエルブ)」シリーズの第7回目。今回は、Q7で部下から高い評価を得る方法を見ていこう。

Q7 職場で自分の意見が尊重されるようだ。
At work my opinion seems to count. (Hear me)


「Hear me」 というわかりやすい略があるので、「傾聴すればいいんだな」と思いがちだが、それだけでは少し意味合いが足りない。傾聴だけではなく、部下の意見を引き出し、その意見にどのように対処するかという点について考えよう。

部下が意見を出しやすくする工夫が必要。環境を整え、相手の声に耳を傾ける

「部下の意見を尊重したいのはやまやまだが、うちの部下は、いくら尋ねても自分から意見を言わない」というのは、多くの上司に共通する悩みだろう。このような場合、「指示に従わない部下が悪い」と思いがちだが、本当の原因は上司側にあるかのもしれない。「部下が意見を言わない」という課題については、「意見を言いやすい環境になっているか」という方向で考えたい。

最初に考えるべきことは、部下が上司に話しかけたときに、上司は話を途中でさえぎらず、否定もせず、最後まで聞いているかということだ。傾聴という言葉を使ってもよいが、それほど難しく考える必要はない。まずは、頭ごなしに否定しないことに気をつけるだけで十分だ。

部下がせっかく意見を言っても、上司が「はぁ? そんなこと、できるわけがないだろう」と見下すような態度を示したり、「そんな甘い考え方ではやっていけないぞ」と説教を始めてしまったりしては、二度と意見を出そうと思わないだろう。

部下がすべての面において、上司よりも未熟だとは限らない。上司にないスキルや方法論を持っているかもしれない。仮にすべての面で未熟だった場合でも、聞くべき意見がないということではない。もちろん、能力だけではなく、ひとりの人間として相手を尊重していれば、上に書いたような態度をとるようなことはありえない。また、上司がきちんと話を聞けている場合でも、さらに工夫する余地はいろいろある。

まずは、「これについてどう思う?」といった曖昧な問いかけをしていないだろうか。たしかに、答えの間口を狭めない問いかけ方が効果的な場合はある。しかし、そう聞かれて皆が黙りこんでしまうような場合には、もう少し具体的な問いかけ方を心がけたい。例えば、「この資料でわかりにくいところはないか」や「より効果的に施策を実行するアイデアはないか」、「施策を実行する上での要望はないか」などである。さらに、もっと単純に、聞かれても考える時間が足りないだけという場合もあるので要注意だ。

「No」と言うならば、必ず理由も説明する

部下が意見を言ったにもかかわらず、「尊重されていない」と感じるのは、前述のような上司の聞く態度がなっていない場合に加えて、自分の意見が簡単に却下されてしまい、その理由の説明もないときである。

そのようなことが続けば、部下は意見を出す意欲を失うだけでなく、仕事自体へのやる気も失い、上司に対する怒りや不信感を感じるようになるだろう。部下の意見を採用することができない場合は、必ず誠実に理由を説明しよう。

理由の説明の方法も、「上がダメと言っているからダメだ」という態度ではいただけない。上司は上層部の意見を伝えるだけの伝書鳩になってはならない。部下の意見に不十分な部分、間違った部分があるとしたら、必ず事実ベースで伝える必要がある。

例えば、「きみが一生懸命提案しているのはわかるけれど、工数がかかりすぎて、製造部に納得させるのは難しいと思う。もう少し手間がかからない方法を考えてみよう」と言ったとしたら、「工数がかかりすぎる」という事実・理由を端的に指摘しているので、部下の感情が傷つけられる心配はない。もし、「工数が増えても、それを上回るメリットがある」という反論が出てきたら、それについても、また事実ベースで考えて対応すればよい。さらに、部下の意見に妥当だと考えられる部分がひとつでもあるのであれば、その点については認め、譲歩する場合もあるだろう。

このように「上司と議論できる」という状況は、部下にとっては大きな喜びであり、そこから得るものも大きい。バカにされたり、握りつぶされたりしない、もし意見が採用されない場合でも、きちんと説明してもらえる。これは、職場の中で部下に大きな安心感をもたらす。

もちろん、自分の意見が採用され、その意見が職場の多くの人を動かすところを見れば、高いモチベーションにつながる。上司がQ7を考えて実践すれば、職場の風土がよくなり、部下が成長するのである。

李怜香(り れいか)
メンタルサポートろうむ 代表
社会保険労務士/ハラスメント防止コンサルタント/産業カウンセラー/健康経営エキスパートアドバイザー
http://yhlee.org