「わかりました」と答えたのに「わかっていない部下」。どうしたら本当にわかるようになるのでしょうか?(部下が変わる①)

『ディズニー・USJで学んだ 現場を強くするリーダーの原理原則』(内外出版社/税込1,620円)では、ディズニーやUSJでリーダーが実践している原理原則を、実例と図解を交えて解説します。
著者は、日本で数人しかいないディズニーとUSJの両方で人材開発に携わった人財育成のプロであり、現在も大企業から海外の企業まで幅広く人財開発を行っています。同書で紹介されている人財育成に必要なリーダーが知っておくべき原理原則の一部を紹介。『部下が変わる』『チームが変わる』『お客様が輝く』『自分が変わる』という4つのテーマにわけ、毎回Q&A形式で分かりやすく解説します。

<質問>
「わかりました」と答えたのに「わかっていない部下」。
どうしたら本当にわかるようになるのでしょうか?
(第3章「部下が変わる!リーダーの原理原則」より)

<回答>
指示は常に伝えること。情報には鮮度があること。
これは私がディズニーランド、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンという2大テーマパークや一流ホスピタリティサービスの現場でリーダーとして仲間とのコミュニケーションを重ねた後、経験則として獲得した原理原則です。
例えば、リーダー側のいらだちのひとつに「この間も言ったよな……問題」があります。
私も現場で何人ものアルバイトさんに指示を出す立場になった当初、同じ問題に頭を悩ま
せていました。
「どういうふうに対応するか、この間も説明したよね?」
「ここを整理整頓するように、昨日、言っておいたよね?」
対応の仕方を説明しておいたのも、整理整頓するように指示を出していたのも事実です。しかし、目の前の現実として、仲間であるアルバイトさんは対応の仕方に迷い、お客様を不安にさせ、きれいに整えられているはずだった現場のバックヤードは雑然としたまま…。
「たしかに、言ったし、『わかりました』『やっておきます』と答えていたのに」と。

仲間に対して仕事に関する指示、自分の考え方などを伝えたはずなのに、うまく伝わらない。このモヤモヤの原因は、伝える側であるリーダーのふたつの勘違いにあります。
ひとつ、指示は常に伝え続けなければいけません。ところが、伝える側は一度、伝えて、相手が「わかった」と言ったら、伝わったと理解してしまいます。そして、その伝わったが、半永久的に伝わっている状態として保たれると考えがちなのです。
ところが、指示を受ける側にとっては「この間」も「昨日」も、「今日」ではありません。その場では指示を理解し、「わかりました」「やっておきます」と言っても、次の瞬間に別の仕事に向かわなければならないとなった場合、あなたに対する「わかりました」「やっておきます」は鮮度が下がった古い情報として棚上げされてしまうこともあるわけです。
「今、ここ」に現場のスタッフは集中しています。「今、ここ」なのです。
つまり、指示は一度、伝えたらOKではないということ。伝える側にとっては「また言うのか」と感じるくらい丁寧に、常に現場は生きていて、状況は刻々と変化しているという前提のもと、「指示は必要があれば何度でも、丁寧に言うこと」が大切です。

この原理原則を忘れてしまうと、若き日の私のように「昨日は『うん!』って言ったのに、なんでやらないんだ!」という、伝える方も言われる方も不幸せな気分になるコミュニケーションを繰り返すことになります。
コミュニケーションに伝える側の責任、受け取る側の責任があるとすれば、伝える側には「相手が自分の言ったことをしっかりと受け取っているのかどうかを確認する責任」があります。伝えっぱなしになることは責任を果たしていないということになるのです。

あなたは、かぴかぴになった握り寿司を手に取りますか?

もうひとつのリーダーが犯しがちな勘違いは、あなたの出した指示や考え方が常に最適だという思い込みです。
私はよくこんな例え話をします。回転しているお寿司屋さんに行ったとしましょう。あなたの前に、かぴかぴになったまぐろの握りの載った皿が流れてきました。
まぐろを食べたいと思っていたとして、あなたは皿に手を伸ばすでしょうか? きっと皿のことは見逃して、レーンの中にいる板前さんに「まぐろの握りをください」と頼むはずです。そうすれば、食べたいタイミングで、鮮度のいい握りが「はい! お待ち!」と出てきます。
これが「情報には鮮度がある」という原理原則です。

あなたが良かれと思って出した指示、伝えたアドバイスも受け取る側の準備が整っていなければ、寿司皿のネタのようにレーンを回り続けることになります。
その間に指示を伝えた時点とは状況が変わり、情報の鮮度は落ち、役立つはずのアドバイスも的はずれなものになってしまうのです。
ところが、ネタを出した側は「おまえの目の前に、輝く赤身の、鮮度のいいまぐろを出したはずだ」と思っています。この感覚のズレが、伝えたはずなのに、伝わらないというすれ違いを生み出します。
先ほど、指示は丁寧なほど常に伝えるべきだと書いたのも同じ理由からです。
人は食べたいときに、いい鮮度のものを口に運びたいという欲張りな生き物です。同じように、いいアドバイスも受け取る側の状況によって聞き流されることがあります。情報の鮮度を新鮮なままに保つため、最適な方法は常に言い続けることなのです。

改めて「今、ここ」に現場のスタッフは集中しています。「今、ここ」に最高の鮮度が存在するのです。

□部下が変わる! リーダーの原理原則①
情報はすぐに腐る。
だから指示は常に新鮮なものにしておこう。
「わかりました」と答えたのに「わかっていない部下」。どうしたら本当にわかるようになるのでしょうか?(部下が変わる①)