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真の「幹部」を育てる

第5回  思い切って「止める」決断をする

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幹部は「具体的な仕事のやりかた」(How)を考える事よりも、「そもそも何をやるか」(What)を考えることが求められます。例えば、A商品を売る際に「どのようなお客様に営業をかけるか?」「どのようなツールを使って、どのような販促をするか?」を考えるのは、現場マネジャーであり幹部の仕事ではありません。  
幹部は、「そもそも、A商品を会社として扱い続けるかどうか」を考えます。今後、脈があると判断すれば、現在は売り上げが悪くても投資し続けます。一方で、脈がないと判断すれば、思い切って取り扱いを止め、他の商品にシフトすることが求められます。

しかし、幹部に成り立ての頃は、この「止める」という決断をするのはなかなか難しいのが現状です。現場マネジャーだった頃は、上層部が決めた「戦略商品」を「どうやって売るか?」「どのように計画を進捗させるか」を考え続けてきました。「なんで、これが戦略商品なんだ?おかしい」と感じても、それを売ることを「止める」という判断はできません。売ることを止めれば、それは方針に背いたことであり、マネジャー失格という烙印を押されます。
その「止める」という判断を、幹部はする必要があるのです。

良く幹部研修で、「確かに止めることが必要なのは分かりました。でも、止めるときの判断基準は何なのでしょうか?」という質問を受けることがあります。判断基準は会社によって、部門によって違いはあると思いますが、概ね下記のような点を意識して判断することが必要です。

①これを続けて、自社の強みが活かせるかどうか?
市場で勝ち続けるためには、自社の強みが活きることが重要です。「今は実績が出ていないが、これをやり続けることで、自社の強みが引き立つ」と考えるのであれば、続けるべきです。一方で、現在多少実績が出ていても「これを続けても、自社の強みは生きない」と考えるのであれば止めるべきでしょう。
自社の強みとは違う方向性に力を入れすぎて傾いた企業を、皆さんは知っているはずです。

②これを続けて、お客様のお役に立てるかどうか?
「これを続けることで、今よりもお客様のお役に立てるのか?」という点も、止めるかどうかの判断基準になります。ポイントは「今よりも」という点です。企業がお客様に選ばれ続けるためには、年々進化し続けることが必要です。「これを続けていれば、人が育つ」「より良いサービスにつながる」と考えるのであれば、現在実績が出ていなくても堂々と続けるべきです。逆に、それが見込めなければ潔く止めることです。

③これを続けて、企業に勢いがつくかどうか?
サントリーは赤字事業であるビール事業を続けてきました。もちろん色々な理由はあったと思いますが、「世界最高峰のビールをつくりたい」「一番おいしいと言われるビールをつくりたい」という熱い想いがあったことは間違いないはずです。それが、サントリーのビール事業を黒字にし、業界4位から3位に押し上げる原動力となった「プレミアム・モルツ」の開発につながりました。
「もっと良い物を」「何としても一番を」と、企業に勢いをつける物であれば、敢えて辞めずに残すというのも必要です。しかし、やればやるほど従業員が疲弊したり、企業の勢いをそぐものであれば止めることを選択してもよいでしょう。

「止める」かどうかの岐路に立った時、上記①~③のようなシンプルな判断基準で、思い切って決断できるかどうかで、幹部として成長しているかどうかが分かります。

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プロフィール

株式会社ジェック CPM経営変革推進統括 取締役 松井 達則 氏

株式会社ジェック CPM経営変革推進統括 取締役 松井 達則 氏

1972年生まれ。立教大学卒業。アメリカン・エキスプレスを経て、2001年株式会社ジェックに入社。通信業界・住宅業界・不動産業界・食品メーカーをはじめ、多くの業界に対してリーダーシップ教育及び現場変革コンサルティングの経験がある。特に、営業部隊の変革には定評があり、これまで多くのプロジェクトリーダーとして顧客成果を創出している。近年は「自律型人材育成」をテーマに、創造的な職場づくりへの取り組みに力を入れている。
【著書】 『メモテク』(かんき出版)、『営業のプロが教えるすごい仕事術』(日本実業出版社:共著)
【執筆】 『ザッツ営業』(日本実業出版社)、『企業実務』(日本実業出版社)、『近代中小企業』(データエージェント)

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