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ゲームを使って後継者を育成する

第4回  事例に騙されずに効率的に後継者を育成する3つの肝とは!?

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事例に飛びつかず、自社の事情を踏まえる

 経営者育成にゲームを使う事例は豊富にあり、うまくいっていそうな事例を聞くと、つい飛びつきたくなる。ただし、事例には注意した方が良い。事例というものは、各社の事情を踏まえた施策であり、あらゆる場合に汎用的に成果が出るわけではない。前提となる事情が似通っていなければ同じような効果が出るとは限らない。

 とある会社では、カリスマ経営者の主導で後継者育成を熱心に行い、その中でゲームを用いている。そして、それは成功しているように見える。ただし、前提として、その会社には徹底した基礎教育があり、更に、経営者のビジネス哲学と近いゲームを何度も繰り返すことへの時間投資に強くコミットがある。だからこそ成功しているのだ。

 しかし、多くの会社では、同じ対象者が複数回同じ研修に参加する機会は与えられない。更に、徹底した基礎教育を行っているとは限らない。更にいえば、その事例の会社と同じビジネスモデルだとも限らず、目指すゴールも異なる。こうした事情を踏まえずに、「ゲームで後継者育成をする」施策だけを模倣しても成功は覚束ない。基礎がない参加者を連れ出して1度遊ぶだけで、後継者が育つような魔法はない。

 歴史を振り返ると、天才と称されたカルタゴのハンニバルも、当時の先達であるアレキサンダー大王の用兵を模倣した。将棋ではプロ棋士も定跡をなぞる。ビジネスでも、先達が生んだフレームワークを使用する。このように様々な局面で小さな判断を行うための定石・定跡を知識・体験の両面から学ぶことが重要である。素人に経営を任せないのは失敗するからである。何も知らない素人に実践さながらのゲームをしてもらうのは早すぎる。

経営者としての実力をつけるには手順がある!?

 意思決定を学ぶ際には、手順があると考えている。まずは、運のない状況で正しく判断できるようにし、次に運がありある程度確率が想定できる状況で判断できるようにする。これらは、できる限り競争相手の影響が少ない環境で実施すべきである。こうした環境は、競争環境ではなく社内のマネジメントに近いため、こうしたゲームを当社では“マネジメントゲーム”と呼ぶ。そして、最後に相手の出方で結果が変わるような状況下で現実に近いビジネスを学ぶ。こうした他者が存在することで競争環境の中に置かれ、その中で判断を行うものを“マーケティングゲーム”と呼ぶ。

 当社では、ゲームを使った後継者育成の計画的実施ステップとして、運がない状況での意思決定経験を積む「パースペクティブ」、運があり、刻一刻と変化する経営環境下で意思決定のトライアンドエラーを繰り返して何度も倒産を繰り返す「あかんたぶる」、この両者で粒を揃えて、最後に総合力を試すビジネスゲーム「シンセサイザー」を実施して、実力伯仲の環境下でのヒリヒリするような意思決定体験を通じて経営センスを磨くことを推奨している。この手順であれば、徐々に基礎からはじめて粒を揃えながら、応用にステップアップしていけるのだ。

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プロフィール

カレイドソリューションズ株式会社 代表取締役開発者 / Ludix Lab フェロー 高橋 興史 氏

カレイドソリューションズ株式会社 代表取締役開発者 / Ludix Lab フェロー 高橋 興史 氏

上場企業や人事コンサルティング会社、ベンチャー企業役員を経て2008年に起業。研修の内製化を通じて、教育研修費の偏在を是正し、研修の絶対数の増加を通じた企業の生産性向上を目指して活動している。特に、自らのビジネス経験を踏まえたクリエイティブなゲーム研修の開発に強みを持つ。主な開発実績に財務研修「パースペクティブ」、倒産疑似体験ゲーム「あかんたぶる」などがある。2014年よりゲームを使った学習の研究団体”Ludix Lab”に参画し、共著として”入門 企業内ゲーム研修”を出版。東京大学や慶應義塾大学大学院などでもゲームをテーマとした講演活動を精力的に行っている。

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