アルバイト採用とドラッカー Vol.1

こと日本の人材採用の世界では、急速な少子高齢化と生産年齢人口の減少が大きな社会課題となっており、採用難の危機に直面する企業が後をたちません。

こと日本の人材採用の世界では、急速な少子高齢化と生産年齢人口の減少が大きな社会課題となっており、採用難の危機に直面する企業が後をたちません。特に、日本のGDPや雇用におけるシェアが7割を占めるサービス産業においては、現場スタッフの獲得が非常に困難な状況になっています。

本コラムを通しては、弊社HRソリューションズが展開するアルバイト・パート採用管理システム「リクオプ」や「ハイソル」を通して見えてきた既成事実と御客様との対話を通して見えてきた採用課題を照らし合わせ、現代の採用課題への解を考えてみたいと思います。

私は、これまでに約3000社の採用課題と対峙をさせていただき、現場一筋のコンサルティングを展開しておりますが、まだまだ若輩者であることに変わりありません。そこで、私が尊敬をしてやまないドラッカー氏の言葉をお借りし、より本質的な採用・経営の解を導き出せるよう努めたいと思います。テーマは、「アルバイト採用とドラッカー」。 全6回のコラムのお付き合いを宜しく御願いします。

冒頭では、少子高齢化や生産年齢人口の減少という社会課題を紹介させていただきましたが、実は、この社会変化の中でも、人材採用への柔軟な考え方や取組みを通して、現場での店舗運営を活性化されている企業様が存在します。例えば、拙著『潜在ワーカーが日本を豊かにする』(ダイヤモンド社)にて紹介をさせていただきましたモスフードサービス様の展開店舗の中には、多様な人材が活躍される事例も存在します。

同社が展開するハンバーガーショップ「モスバーガー」では、「手作り・出来立て」の食事の提供をモットーとされています。調理段階では、作り置きをせずに注文を受けてから作るアフターオーダー方式を採用し、価格競争には走らず品質重視の考え方で歩まれています。そこで重要になる点の一つが調理スタッフのスキル。レタスやトマトなど、野菜の仕込みはお店で行なっており一定の量目にカットするのは技術を要します。一方で、生産年齢人口は減り、店舗スタッフの採用の難易度は高まるばかりの現状です。

そこで、「調理経験が活かせる」ということを一つの魅力として、雇用の対象が主婦の方やシニアスタッフにも広がっています。アルバイト・パートスタッフの現場でも、ダイバーシティ採用を取り入れられたわけです。
さらに、ことシニアスタッフの中には、調理のみ、清掃のみ、など、可能な範囲で活躍されている方もいます。店舗毎にも異なりますが、週2回からでも、1日3時間程度でも働ける所もあり、幅広く多くの方が働き手として活躍できる基盤を作られています。

多様なメンバーをいかにマネジメントしていくのかについて、ドラッカー氏は、次のような言葉で語られています。

“偉大なソロを集めたオーケストラが、最高のオーケストラではない。優れたメンバーが最高の演奏をするものが最高のオーケストラである。”
P.F.ドラッカー『ネクスト・ソサイエティ』P180より。 ダイヤモンド社 上田惇生訳

モスフードサービスの例は、まさに、この「優れたメンバーによる最高の演奏」に値するのではないでしょうか。同社において、店舗の従業員がその連帯感を強められるきっかけともなっているのが、「HDC活動」です。ホスピタリティ(H)、デリシャス(D)、クリンリネス(C)の観点から、店舗同士が指摘し合い、よいお店作りを進めていこうという取組みです。強化月間には優秀な店舗が表彰をされるため、それを目指して店舗で働くスタッフ同士の一層の連帯感を生み出しています。

同社直営店でのスタッフの年齢層は、16歳から80歳までと多岐にわたります。(2015年6月時点)。働き手と業務内容とのバランスをとり、強みを最大化させる雇用環境を作る。これは、今まさにアルバイト採用の現場において共通して求められることではないでしょうか。

ドラッカー氏の言葉を借りれば、まさに今、変化を脅威ではなく機会として捉える姿勢が採用の現場に求められているのかもしれません。

“変化を脅威ではなく、機会としてとらえなければならない。組織の内と外に変化を見つけ、機会として使えるかどうかを考えなければならない” 
P.F.ドラッカー『経営者の条件』P11より。 ダイヤモンド社 上田惇生訳