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経営階層に求められる能力とは?

第8回  経営階層への成長モデル

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 「見性の境地」に達した経営者階層は、「叡智」と「慈悲」と「意志」の働きを保持し、それぞれ、「超速」「超遅」「不動」の視点を併せ持ち、会社を正しく独自な社会貢献へと牽引していくことになっていくわけです。
 各階層にあるギャップを表現すると下図となります。

キャラと成長モデル

 『麓暢(ふもととおる)の人間診断』(麓暢著、日本能率協会マネジメントセンター刊)では、「思考サイクル」と「外向エネルギー」の二軸で人間のキャラを分類する理論が提唱されています。上述の職階の二軸では、「処理速度」と「発言力」でしたが、ちょうどそれに類似した二軸になっています。本理論のキャラ分類を大きく四分類にして筆者は以下の動物キャラとしてネーミングしました。「犬」と「猿」と「雉」と「亀」の4キャラです。最初の3キャラは、「桃太郎」に付き添う動物ですね。「亀」は「浦島太郎」に出てくる動物です。
キャラと成長モデル

 実務階層は犬、実務マネジメント階層は猿、部長階層は雉、役員階層は亀に呼応します。
 つまり、会社における職階発展プロセスとしては、犬→猿→雉→亀ということになります。
 勿論、キャラは各自固有のものですから、職階が変わったからといってもすぐに変更することができません。しかし求められる要素は、どんどん変わっていくことになります。面白いのは、犬-雉のペアは理性的なのに対して、猿-亀は感性的であることです。
 入社して就く実務階層は、犬のキャラの人が一番やり易いことになります。周囲の方に敏感に反応し、手堅く忠実に実務をこなしていきます。他のキャラは自分の特性と求められる特性が違うので悩んでしまいます。猿や亀は身に付けられなければならない知識やプロセスにウンザリし、猿と雉は命令されることに反発しがちで、雉と亀は迅速に処理していくことに抵抗を感じてしまうわけです。
 このように会社における職階の向上に伴い、求められる要素が変わってくるのに対して、自分のキャラとは合わない特性をどうやって後天的に身につけていくかが、向上するために必須となります。職階の求める特性と自分のキャラ特性のギャップに気づき、後天的にキャッチアップできる人は順調に階段を登ることができますが、それに気づかず、自分の能力を嘆く人は途中で滞留を余儀なくされることになります。勿論、階段を登ることだけがハッピーではありませんが、役員階層を目指す人にとっては留意しなければいけないポイントとなります。
 犬から猿への脱皮は、理性的から感性的への転換と、外向きエネルギーの弱から強への転換です。理性的な人が感性的になるにはどうしたらいいでしょうか?これは傾聴のスキルの一つですが、感情への応答がポイントとなります。周囲の気持ちを表現する言葉を受け止めて応答することで、「気持ちが通じる」と思ってくれると同時に発信にもなるわけです。
 猿から雉への脱皮は、どうしたらよいでしょうか。ここには大きな溝が存在しています。
 感性的な人が理性的になり、且つ速かった思考サイクルを遅くするわけです。そして関心事をミクロからマクロに転換させると同時に、視点の深さも表面から深くに変えていく必要があります。溝が大きいだけに、猿で成功したからといって雉で成功する確率は相当低いと言わざるを得ません。この転換のポイントは、同じく傾聴のスキルの一つである事実の要約がポイントとなります。つまり関心事を感情面に加え、事実にも目を向けて行き、同時に要約することで、全体を俯瞰する姿勢を身に付けていくわけです。又、迅速に動いて成果を出していくスタイルに対し、根拠や法則の発見という視点を持つ必要が出てきます。言わば、演繹的思考法から帰納法的思考法への転換が必要になってくるわけです。換言すれば、あるモデルを前提に成果を出していくスタイルから、事実と結果からモデルを想像・仮説していくスタイルに変身するということになります。このためには、目移りせずに一つのことに集中していく姿勢の転換が求められます。
 雉から亀への脱皮は、何が必要になるでしょうか。実はこの転換の溝は最大となります。
 なぜならば犬から雉までは現象界を対象にしているのに対し、亀は精神界を扱うことになるからです。浦島太郎を竜宮界に連れて行くのが亀ですね。美の女神界と行き来できる存在が亀です。これは前述したように、禅でいう「見性の境地」に悟入していく必要があります。前回紹介したU理論のプレゼンシングの境地ですね。この転換のポイントは、「理解」です。接する人々の個性を理解し、相手の立場に立って支援する姿勢を確立する必要があります。これも又、傾聴でいう「自己一致」のスキルがポイントとなります。「自己一致」の原義は「自分の思うことと表現を一致させる」にあります。相互理解によって相手の思うことを理解し、相手の主張も自分のことのように理解するということがここでは必要になってきます。つまり、肉体的違いの限界を超えた心が通じ合う世界となります。「理解する」とは「愛する」ことと同義という考えもありますので、「汝、隣人を愛せよ」という教えに通じるところがあるのではないでしょうか。
 人の心の多様性を色で表現するならば、心と心の間を七色の虹で架け橋を作るということが、最後の大きな溝を超えるのに必要なポイントと言えるでしょう。亀の甲羅にある六角形が暗示する結晶智とは、現象界と精神界、自と他をブリッジした時に現れるものであり、二つの異なる世界の境界領域すなわち幽玄の世界において会得される「叡智」と言えます。

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プロフィール

株式会社M 代表取締役 八木橋 英男 氏

株式会社M 代表取締役 八木橋 英男 氏

東京大学理学部物理学科卒業。興銀システム開発(現・みずほ情報総研)入社。経営情報システム、海外総合オンラインシステム、外為オンラインシステム(プロマネとして)等の開発を経験。日本証券テクノロジーに転職し、PMO部長、人事担当部長を歴任。FP見積法の導入、人材育成評価ツール「ノウハウマップ」の導入、事業強化拡大研修の開発・普及、等を推進。株式会社Mを設立し代表取締役に就任。「イメージ・ナビゲーション思考法」を軸にした新しいビジネス研修を開発し、普及中。産業カウンセラー、キャリアコンサルティング2級資格を保有。
ホームページ:株式会社M

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