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経営階層に求められる能力とは?

第4回  相生相剋とシステム思考

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システム思考と陰陽五行

 前節でシステム思考を説明しましたので、読者の方は既にお気づきかもしれませんが、システム思考の方法で重要な「ループ図」は、実は陰陽五行に含まれている手法と言えます。
 陰陽五行では、5つの気の働きでプロセスの全体循環を整理しており、更にプロセス間の好循環構造を「相生」として、悪循環構造を「相剋」として整理しております。五行の循環が全体のループ図、相生が自己強化ループ、そして相剋がバランスループに相当します。更には既述したように相剋は「相補性」としてとらえ直すことができます。この点は、システム思考でもまだ整理されていない点です。一見すると「悪循環」に見える関係も、見方を変えると「相補性」の関係になるということは何を示しているのでしょうか。これは、要素関係を固定的に捉えるのではなく、より柔軟な「しなやかな」関係で捉える視点を提供していると言えます。
 1回目で経営階層の役割は「保守」と「革新」の矛盾を如何に克服して発展するかにあるとお伝えしました。「好循環」「悪循環」という認識レベルから、「相補性」というしなやかな視点を持つことで、より発展的な関係を構築するというのも同じですね。哲学者のヘーゲルが、「正」「反」「合」という弁証法論理を主張しましたが、これも正・反という認識レベルから脱皮して対立概念を「総合」する考え方です。この「しなやかな視点」こそが、実は経営者に求められる重要な能力ということができます。この能力の中核は、「冲」の気の働きと言うことができます。
 では、経営の現場において矛盾を克服する働きとは一体何でしょうか?これは第3回で詳述しましたが、経営ビジョン・理念・使命のことです。経営が目指す理念価値を強く掲げることで、矛盾する関係も相補的関係になるしなやかな視点をもたらします。相対立する関係も、それを推進する主体に対して、もっと大きく目指すべき方向性を指し示す時に、小さな範囲での対立が消え共に同じ方向に向かっての協力関係に変わるということを意味しています。
 世界に羽ばたく本田技研工業の成長期において本田宗一郎氏と共に経営を担った藤沢武夫氏。欧米における対立概念としての労使関係を、見事に協調関係に変えた氏の労働争議の解決話は有名です。上から目線の対話ではなく、経営の実情をさらけ出して全員一丸となって苦境を乗り切る「念い」を主張されました。この純粋な経営者としての志が、対立概念を越えて新しい労使関係を築いた一例とも言え、日本的経営が誇る世界的発明・金字塔と言えるのではないでしょうか。

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プロフィール

株式会社M 代表取締役 八木橋 英男 氏

株式会社M 代表取締役 八木橋 英男 氏

東京大学理学部物理学科卒業。興銀システム開発(現・みずほ情報総研)入社。経営情報システム、海外総合オンラインシステム、外為オンラインシステム(プロマネとして)等の開発を経験。日本証券テクノロジーに転職し、PMO部長、人事担当部長を歴任。FP見積法の導入、人材育成評価ツール「ノウハウマップ」の導入、事業強化拡大研修の開発・普及、等を推進。株式会社Mを設立し代表取締役に就任。「イメージ・ナビゲーション思考法」を軸にした新しいビジネス研修を開発し、普及中。産業カウンセラー、キャリアコンサルティング2級資格を保有。
ホームページ:株式会社M

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