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ドラッカーが教える人材育成

第3回  自分の分身をつくってはいけない

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正しい権限委譲で部下を活かす

 権限委譲とは、「上司がさらに価値ある仕事を行うために、自分の仕事を部下に移すこと」です。権限委譲は、部下の成長を目的に行ってはいけません。ところが、多くの権限委譲が部下に仕事のやり方を教え、上司が教えた通りに部下に仕事をさせる、というものになっています。
 権限委譲した上司は、自分の教えた通りに部下がちゃんとやっているかどうか気になります。上司は、部下の仕事のやり方から結果まで、何から何まで気になるために、部下の仕事を監視したくなります。事実、部下の仕事のやり方を監視します。そして、言った通り、ちゃんと仕事をしているかどうか、仕事のやり方から結果まで報告させます。
 部下は、叱られないように、上司から言われた通りに仕事をするだけです。これは、権限委譲ではありません。単なる指示命令に過ぎません。権限委譲という方法で部下を育てようと考えながら、実際に行っていることは部下を自分の手足のように使っているだけです。
 権限委譲とは先にお伝えしたように、「部下の成長のために、上司ができることを部下にやらせること」ではありません。「上司がさらに価値ある仕事を行うために、自分の仕事を部下の仕事に移すこと」なのです。あなたが今行っていることは、権限委譲でしょうか、それとも指示命令でしょうか。

指示命令で人は育たない

 指示命令で人は育ちません。また、指示命令で人を動かすことはできません。たしかに、肉体労働が主体の時代は、指示命令で人を動かすことができました。目に見える単純作業は、ちゃんと働いているかどうか監視することができました。しかし、知識労働は、知識や情報を使う仕事です。監視したとしても、実際は何をやっているかわかりませんし、知恵を出せと命令したからといって、ポンと出てくるものではありません。
 知識労働者が成果をあげるためには、今までのやり方を改善したり、もっと良いやり方を見つけ出していかなければなりません。自発性が必要なのです。その自発性は、指示命令によって生まれるものではありません。知識労働者が主体の今日にあっては、指示命令で人を動かそうとしても、うまくいきません。では、どうすればいいのでしょうか。
 ドラッカーはこう言っています。

「知識労働者にとって必要なものは管理ではなく自立性である。知的な能力をもって貢献しようとする者には、大幅な裁量権を与えなければならない。自らが使命とするものを自らの方法で追求することを許さなければならない。ということは、責任と権限を与えなければならないということである。」(ピーター・ドラッカー『P・F・ドラッカー理想企業を求めて』)

 課せられた成果に伴った責任と権限が与えられていなければ、自立性は生まれません。上司の支配下に置かれた仕事ではなく、自分の仕事は自分の判断で働くことができる中でこそ自立性は生まれるのです。成果をあげ、成長してもらうためには、自分の仕事は自分の判断で進めることができるようにしてあげなければならないのです。

責任ある仕事を任せれば人は成長する

 あるIT企業に社長からも部下からも信頼されている優秀なマネジャーがいました。そのマネジャーは、「新人がプロジェクトを運営できるようになるには3年かかる」と言っていました。何年か経った頃、そのマネジャーは子会社の社長になっていました。5名のメンバーとともに新しい事業の立ち上げに日々奮闘していました。子会社とはいえ社長ですから、その会社のことについてはすべて任され、報酬も業績に応じて自分で決めていました。さらに2年が過ぎた頃、彼は「新人の育成は半年あれば十分だ」と言うようになりました。新人の育成に対する考えがすっかり変わっていたのです。
 誰かに説得されて考えを改めたわけではありません。自分に課せられた責任と向き合うことによって、自分で自分の考えを変えたのです。このように、責任ある仕事を任せれば、人は考えを変え、成長していきます。ぜひ、あなたの部下に具体的な責任を与えてあげてください。

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