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ドラッカーが教える人材育成

第3回  自分の分身をつくってはいけない

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「今、会社の将来を考えている。そこで自分の同じ起業家タイプの経営者を育てたい」

 これは、ある会社の社長とお話をしていたときにその社長から聞いた言葉です。しかし、自分と同じタイプの経営者を育てることはお勧めできません。
 ドラッカーはこう言っています。

「経営者に限らず上司は、自分のコピーをつくりたがる。上手くいって一回り小さなコピーが出来上がるだけである。収縮のスパイラル。どだいコピーが本物であるはずもなく、異質性の中から活力が生まれるということを無視してはならない。」(ピーター・ドラッカー『ドラッカー世紀を生きて』)

 人材の育成で押さえておかなければならないことは、「その人をこちらの望む型にはめ込むこと」ではなく、「その人の一番いいところを引き出すこと」です。

上司の評価は部下を育成したかどうかで決まる

 ドラッカーは『ドラッカーの経営哲学』の中で、こんな事例を紹介しています。
 アメリカの通販会社であるシアーズローバック社は1940年には管理職の育成に取り組み始めていました。将来を嘱望されていた2人の社員がおり、1人は売上と利益では大きな成果をあげていましたが、人材を育成することはしていませんでした。もう1人は売上と利益では大きな成果をあげたわけではありませんでしたが、多くの人材を育てました。評価され、昇進したのは、後者の社員でした。売上と利益で大きな成果をあげたわけではありませんでしたが、多くの人材を育てあげた人を同社は選んだのです。当時の社長の考えはこうでした。
「前者の人は今日のための仕事をしているが会社の明日に貢献していない。しかし、後者の人は、会社の明日に貢献していた」
 このときから、シアーズローバック社は、優れた人材が育つようになりました。その2年後、社長が変わりました。それまで人材の育成が重要視されてきましたが。売上げの額だけで評価が行われるようになりました。その結果、誰も人材の育成を重要視しなくなったばかりか、上司は部下の育成に関心を持たなくなりました。手間のかかる部下は、上司にとっては煩わしい存在であることさえありました。経営者へ昇格する基準に人材の育成はまったく考慮されなくなったのです。その結果、シアーズローバック社は、優れた人材が育たなくなりました。
 人材が育つか育たないかは、経営者の姿勢にかかっています。具体的に言えば、組織運営のやり方にかかっています。
 ドラッカーはこう言っています。

「あらゆる経営管理者に対し、人材の育成が仕事の一部であることを認識させなければならない。部下や跡を継ぐ者たちこそ重要な資産であるとすることが、彼ら自身の利益になるようにしなければならない。部下の成長は、育成した者にとって昇進に値する貢献としなければならない。障害となるようなことがあってはならない。」(『企業とは何か』)

 「部下をどれだけ育成したか」を上司の評価基準に加えるだけで、上司の部下育成への関心度合いが大きく変わります。優れた人材を育てるために、上司の評価基準に、部下の育成を加えてください。

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