「取りつく島」もない交渉相手に対するアプローチ

当社のクライアント様から「取りつく島もない交渉相手に対して、どのようにしてアプローチしていけば良いのか」という相談が少なからずあります。そこで今回は、ビジネス心理学から「ピーク・テクニック」、「ザイアンスの第二法則」、「極小依頼」、「スリーパー効果」などを取り上げて、「取りつく島」もない相手に対する打開策を説明いたします。

ピーク・テクニック(乗り気でない相手に対して)

 まずは、面談はできたが、全く乗り気でない相手に対するアプローチ方法です。
広告業界で盛んに使われている「ピーク・テクニック(pique・technique)」という心理学の手法があります。これは、人・興味などを、刺激する・そそる・あおるという説得テクニックの一つです。
 相手に「何故?」とか「おや?」と思わせること、あるいは「ありえない」「考えられない」ということを投げかけることによって、相手の好奇心をかきたてるわけです。
 相手が最初から「全く無理」と拒絶してきた時「そうでしょうね。分かります。それは無理ですよね」と素直に肯定したとしたら、相手は「おや?」と思うのではないですか。
 ここでの1つ目のポイントは、まず、相手の発言を受け入れ、共感することです。そして、まだ言い足りないようであれば、思う存分発言してもらい、それらを肯定しながら傾聴することです。この時点で反論することはタブーです。
 2つ目のポイントは、相手が興味をそそるような交換条件を事前に用意し、「その代わり」と、相手のメリットになる何らかの「譲歩カード」を先に提示することです。
 例えば、相手が全く拒絶ではないと判断できた時に「無理は百も承知でお願いするのですが、その代わり○○については、当方でこうさせていただきますので、ぜひ、お力を貸していただきたい」と切り込みます。

ザイアンスの第二法則など(拒絶している相手に対して)

 次は、電話アポや飛び込みセールスなどで拒絶する相手に対するアプローチ方法です。
 その場合、すべての相手が見込み客になると思わないことです。見込み客に出会うため、多くの対象外の人を選り分けていると考えてください。
 つまり、無駄なセールス時間を費やさないため、自分は今、その選別作業をしているのだと思えば、拒絶が続いても落ち込みません。
 また、人は、会う回数が多くなればなるほど、相手に好意を持つものです。(心理学;ザイアンスの第二法則)。
 そして相手が、少しでも心の窓を開けてくれた時は、「ほんの少しの時間でいいですので……」と、相手に心理的負担を感じさせないように心掛けながらアプローチしてください(心理学;極小依頼)。
 それから何よりも大切なのは、自分の扱っている商品やサービスに対する愛着です。
 “儲ける”という字は、「信じる者」と書きます。自分が自分の商品(サービス)を信じられないのなら、人に勧めても、その良さや思いが相手に伝わるはずがありません。

「あなたは、自分の扱っている商品(サービス)を信じていますか?」
「この商品(サービス)は素晴らしいものだと、自信を持って言えますか?」

スリーパー効果(過去に信頼を失った相手に対して)

 さらに、過去に信頼を失い、疎遠になってしまった相手に対するアプローチ方法です。
 相手を説得するには、説得者の「信頼性」が大きな比重を占めます。同じことを言っても「信頼性」の有無で、相手が説得を受容してくれるかどうかが左右されます。 
 だからと言って、手をこまねいていても仕方がありません。そこで、心理学の「スリーパー効果(Sleeper Effect)」を説明します。和訳では「仮眠効果」です。
 これは、説得者の「信頼性」と「説得内容」による『説得の効果』において、「時間」が大きく関係しているというものです。説得効果は、説得直後が最も高いです。
 しかし、その「信頼性」と「説得内容」の2つの記憶は、時間が経つと分離され、相手には、説得者の「信頼性」の記憶は薄れ「説得内容」の記憶のほうは確実に残ると説明されています(分離仮説:Kelman&Hovland)。
 つまり、あなたが「信頼性」を失っていると思っていたとしても、時間が経てば、相手には「説得内容」の記憶しか残っていないことも十分に考えられます。正に「時間が解決する」ということです。
 突破口は、良質の「説得内容」を発信し続けることです。「以前ダメだったから」と諦めずに、一生懸命に何度でも、粘り強く相手にアプローチしてください。